[原子力産業新聞] 2004年4月8日 第2230号 <3面>

[IAEA] イランの核開発の状況 A

先週号に引き続き、国際原子力機関(IAEA)が2月24日、理事国に配布したイランの核開発および保障措置協定違反に関する報告書「イランにおけるNPT保障措置協定実施状況について(GOV/2004/11)」から、イランの遠心分離およびレ−ザ−ウラン濃縮開発の部分の概要を紹介する。

ウラン濃縮 1. ガス遠心分離法

イランは1991年にUF6を輸入した。イラン側は最初、2つの小さなシリンダ−に入っていた1.9kgのUF6が貯蔵中に漏洩したと説明したが、その後このUF6はカライ電気会社での遠心分離実験に使用したと認めた。

IAEAでの環境サンプリングの分析結果から幾つかの疑問や問題点が出てきている。36%の濃縮ウランが検出されたが、これはカライ電気会社の1つの部屋のみにほとんど限定されている。イランは1.2%以上へのウラン濃縮を実施していないと言っており、機器の輸出元と考えられる国での環境サンプリング試料を要請するなど、この疑問を解決すべく努力している。また、輸入された遠心分離機器および国産の機器について、ナタンズで環境サンプリングを実施している。

イランは、2003年10月、欧州で設計されたP−1遠心分離機に関する詳細を申告した。IAEAの質問に対して、2004年1月には、高性能のP−2遠心機の図面を1994年に外国筋から図面を受け取り、核物質は使ってはいないが、国産のロ−タ−を使って機械試験を行ったことを認めた。P−2遠心機の開発については、テヘランの私企業と契約を結んで実施したが、この会社の所有者は、イランではマレ−ジング鋼製シリンダ−の製造が出来なかったので、より短いカ−ボンファイバ−のロ−タ−を7本製造し、核物質を使用せずに試験をしたと述べた。同氏は、この作業は2003年6月には中止され、全ての機器はテヘランにある会社へ移されたと語った。

IAEAは、P−2の設計と関連作業が、2003年10月21日の申告から漏れていた理由を質したが、イラン側は当時、遠心機の申告に多忙で怠ったと答えた。これは諸状況を考えるとつじつまが合わない。IAEAは現在P−2に関する情報をさらに調査中である。

2.レ−ザ−濃縮

2003年10月21日付書簡で、イランは1970年代から原子蒸気レ−ザ−同位体分離(AVLIS)と分子レ−ザ−分離(MLIS)について契約を結び、機器を輸入したと申告した。またイランは、50kgの金属ウランを1993年に輸入、その一部は試験に使用した。これらの機器は、2003年5月には解体され、カライに移したと報告した。IAEAは、AVLISとMLISの重要機器と情報の譲渡に関して関係国が提供した情報を、イランからの情報と突き合わせている。今後はAVLISに関して採取した環境サンプリングの評価などの仕事が残っている。

(続く)


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