[原子力産業新聞] 2004年4月15日 第2231号 <5面>

[放医研] 永久磁石型イオン源を開発

 放射線医学総合研究所はこのほど重粒子線がん治療装置「HIMAC」の小型化を実現する永久磁石型ECRイオン源(=写真)を開発した。現在の同イオン源に比べ、占有面積と消費電力を約二十分の一、製造コストを約二分の一にすることが可能で、同装置の普及に大きく寄与する見通し。

 現在、「HIMAC」のECRイオン源では、電子とイオンを閉じ込める強力な磁場を最大電流600Aの電磁石2台により形成している。電源を含めた全体の占有面積が5.3×6.9メートルと大きく、部品点数、維持費などの課題もある。

 新しいイオン源は永久磁石型小型ECRイオン源「Kei2−source」。四価炭素イオン生成のための最適な磁場分布を見出し、これを永久磁石によって再現した。永久磁石の場合、固定磁場になるためビームの最適化が困難という課題があるが、マイクロ波源として周波数を大きく変更できる進行波管を採用し補った。

 「Kei2−source」は五百μAと重粒子線がん治療に対応できる充分なビーム強度を得ている。イオン源から高いエネルギーのイオンを引出すため、引出電極に高電圧を印加する必要があるが、永久磁石では絶縁の点で高電圧を印加し易く、より高エネルギーのイオンをリニアックに送り出すことが可能。これによりリニアックの負担を軽減し、リニアックを小型化できるため、装置全体の小型化に寄与するという。

 放医研の重粒子医科学センター加速器物理工学部では小型・低コストの普及型重粒子がん治療装置の開発を進めているが、このための大きな課題が安定性能を有する小型イオン源の開発とされてきた。今後、同部では長時間の運転試験やリニアックの入射を考えたエミッタンス測定などを実施する予定。


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