[原子力産業新聞] 2004年4月30日 第2233号 <3面>

[米NEI] 副理事長が会見 米で新規原子力発電所への動き

 原産年次大会に出席のため来日中の米原子力エネルギー協会(NEI)ダガー副理事長は、22日、都内で記者会見を行い、米国における新規原子力発電所建設への動きなどについて語った。ダガー氏は、ピルグリム原子力発電所副所長など原子力発電所勤務を経て、現在、NEIの原子炉運転担当副理事長を務めている。

−米国での原子力発電復活への功績で、NEIは高い評価を受けているようだが、復活の理由は。

ダガー 原子力が地域の経済に与える好影響や、環境影響が少ないことから、ほとんどの米国民は原子力に好意的だ。TMI事故後、米原子力産業界は厳しい状況となり、公衆、メディア、行政府の信頼を取り戻すには、多大な努力と時間が必要だった。信頼回復には、(1)実績の高さ(2)公衆とのコミュニケーション(3)教育−−が鍵だ。

−3月末に米大手電力を中心とする2つのコンソーシアムが結成され、米国で25年以上ぶりの新規原子力発電所建設につながるのではないかと期待される。今回の動きの背景と今後の見通しを。

ダガー これまで原子力発電所の建設には、建設許可、低出力運転認可、全出力運転認可など、数多くのステップを踏まなければならなかった。今回の動きは、建設・運転複合許認可がうまく行くか試すための第1歩だ。

原子力発電所建設には莫大な資金と時間がかかるため、金融界から否定的な見方をされてはいけない。これが今後、建設へ向けて具体的な動きになるかどうかは疑問であり、政府と議会での基盤整備が必要だ。私はコンソーシアムの1員であるエンタジー社で働いていたが、原子力発電所建設には、株主など利害関係者に、財政面での見込みをきっちり示さなければならない。新規建設は、必要な要素がそろってこそ実現するものだ。

−「政府や議会での基盤整備」は具体的にどのようなものか。

ダガー 投資リスクを減らすために、例えば、(1)原子力発電所運転の報奨金(2)建設費投資への減税措置(3)建設費の早期償却措置――などの財政措置が必要だ。

−マサチューセッツ工科大学(MIT)が昨年、「原子力の将来」と題する報告書をまとめ、2050年までに世界で原子力発電所1000基をワンススルーで運転するとのシナリオを描いたが、これをNEIはどのように見ているか。

ダガー MITのような有力な大学が、原子力産業界に好意的な見方を発表してくれるのはありがたい。NEIは「ビジョン2020」の中で、2020年までに20基の原子力発電所新規建設を打ち出している。核燃料サイクルについては、米国の政策では再処理せずにユッカマウンテンに処分することになっており、優れた地質的特性からも、米国ではこれがよい方法と考える。

−今年末の米大統領選挙で民主党が勝った場合、原子力政策にどのような変化が予想されるか。

ダガー 原子力産業界は、議会上下院でも大きな支持を得ており、大統領と議会とのチェック・アンド・バランスの性格から、大統領が変わっても、原子力政策にはあまり大きな変化はないものと考える。


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