[原子力産業新聞] 2004年5月13日 第2234号 <3面>

[シリーズ] ウクライナ便り、チェルノブイリ事故から18年

【4月27日=キエフ松木良夫】チェルノブイリ事故から満十八周年を迎えたウクライナでは、最近、チェルノブイリ発電所と、事故の影響を受けた人々の復興支援について、新たな動きが見られる。

 2000年12月に停止したチェルノブイリ原子力発電所(=写真)は、使用済み燃料の輸送準備中で、敷地内に建設中の使用済み燃料貯蔵施設が完成間近。事故で破壊された4号機を包む石棺の補強工事と、その上に被せられるはずの新シェルターの工事も間もなく始まる。

 また、立ち入り禁止区域以外の放射能汚染区域の居住者へ、職業訓練や村おこし運動を支援する国連開発計画(UNDP)のプロジェクトが始まる。これには、日本政府から人間の安全保障基金の約120万ドル(約1億3000万円)が充てられ、日本の顔の見える援助が期待されている。

 国際的に事故の影響評価の議論が再燃する気配もある。国際原子力機関(IAEA)が1996年に開催した、チェルノブイリ事故10年後のフォローアップに関する国際会議では、事故拡大防止作業者並びに一般公衆の中から、今後数十年間に発生が予想される白血病とガンによる死亡者数の計算値が報告されたが、これらは、自然に発生が予想される同種類の病気の発生率をはるかに下回るため、実際には識別が難しいとされた。また、それ以外の病気については、放射線との因果関係を科学的に証明出来ないとしている。唯一事故の影響がはっきりしたものは、通常、百万人に一人と言われる小児の甲状腺癌だった。

 ところが、ウクライナ保健厚生省は、その後も放射能汚染地域の住民、立ち退き区域の元住民、事故対応活動に従事した人々、及びそれらの家族と子供達に対する健康診断と医療活動を継続し、IAEAの計算結果を上回る症例を報告している。

 これらの食い違った評価結果の整合をとるため、IAEAは3月、ウイーンで世界保健機構(WHO)など8つの国連機関とベラルーシ、ロシア、ウクライナの代表を招き、「チェルノブイリ・フォーラム」を組織した。来年か再来年に、国際会議を開く計画もある。

 今年で、米国のTMI−2事故から25年が経つ。同事故では、州知事の判断で避難した住民の避難費用と賃金喪失分、並びに半径40km圏内の事業者と住民への和解金が支払われた。半径40km圏外の住民と事業者からの損害賠償請求については、その後いずれも事故との因果関係の立証がされずに敗訴したため、現在までに事故後の被災者への対応は終了したとされる。

 TMI事故と比べると、環境への放射能放出と十数万人に及ぶ大量の避難者を出したチェルノブイリ事故の性格がうかがわれる。国連が1昨年発表した「チェルノブイリ事故の人的影響、復興への戦略」によれば、2001年に事故の緊急時期は終了し、これから2011年までの10年間を復興期、その後を管理期と定め、政府と国際機関の合意に基づく、より長期的な被災者支援と環境保護を行なう予定になっている。


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