[原子力産業新聞] 2004年6月3日 第2237号 <3面>

[米・DOE] エイブラハム長官 脅威削減計画示す

米エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官は5月26日、ウィーンの国際原子力機関(IAEA)本部で幹部職員等と会合を開き(=写真中央)、高濃縮ウランなどがテロリストの手に渡ることを防ぐため、研究炉用高濃縮ウラン(HEU)燃料の回収と、研究炉の低濃縮ウラン転換などを加速する「全世界脅威削減計画(GTRI)」を明らかにした。

エイブラハム長官はGTRIのため、DOEの国家核安全保障管理局内に専門の部局を設け、4億5000万ドル(約500億円)以上の予算を注入、ロシアやIAEAの協力を得ながら早急に進める意向だ。同長官はIAEAでの会合で、「世界中で200以上の研究炉が寿命を終えようとしており、400基はすでに停止・廃止されている」と述べ、これらからの大量の使用済み燃料や放射性物質の安全な管理・処分の重要性を訴えた。

GTRIは、今年2月にブッシュ米大統領が行った核不拡散7提案を受けたもの。具体的には、DOEが従来から行ってきた、@ロシア製研究炉のHEU燃料の返還計画(RRRFR)A研究・試験炉の濃縮度低減化計画(RERTR)B海外研究炉の米国製燃料受入れ計画(FRRSNF)C放射線脅威削減計画(RTR)――などを統合、管理を一元化する。

GTRIではロシアと協力、来年末までにロシア原産のHEU新燃料の回収を終了、また、2010年までにロシア原産のHEU使用済み燃料を全て回収する。また、米国原産の研究炉使用済み燃料についても回収を加速し、10年以内に完了。HEUを使う研究炉の低濃縮燃料への転換も、米国のみならず全世界の研究炉を対象とし、2013年までに完了する。

エイブラハム長官はウィーン訪問のあとモスクワを訪れ、5月27日にはロシアのルミャンツェフ連邦原子力機関(FAEA)長官と会談、研究炉用HEU燃料の回収対象を、これまで行ってきた新燃料だけでなく、使用済み燃料に広げ、IAEAの枠組みを用いながら回収することで合意した。


Copyright (C) 2004 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.