[原子力産業新聞] 2004年6月17日 第2239号 <4面>

[阪大レーザー研] 新加速器技術で電子ビームを100MeVに加速

 大阪大学レーザーエネルギー学研究センターは、このほどガラス極細管を使用したレーザー加速器で、電子を100MeVに加速することに成功した。小型汎用加速器用の技術で、将来は可搬型癌治療装置などの実現を目指す。

 レーザー加速器は、プラズマ中に超高強度レーザーパルスを走らせることで発生する航跡電場の粗密波により、プラズマ中の電子やイオンを加速する技術。空洞中のマイクロ波電場により加速する高周波加速器に比べ、加速勾配が千倍程度も高い。しかし従来、加速長が短いという難点があり、これを克服するため、極細管を利用した超高強度レーザーの閉込め技術が世界的に研究されている。

 今回、同研究所は内径60μmのガラス極細管が閉じ込めに最適であることを見出すとともに、超高強度レーザーを導入するため長さ1mmのコーン(金製のロート)を取り付けることで、従来の約5倍、1cmの加速長を実現した。レーザーパルスは30テラWで、これをガラス極細管口径以下の大きさのビームまで絞り、コーン側から導入、反対側の細管口から100MeVに加速された電子ビームを得た。

 ガラス極細管を使用したレーザー加速器で、100MeVへの加速は世界でも初めてという。

 同研究所では、今後の研究テーマとして、コンパクトで安定なレーザーパルス源の開発、ガラス極細管長(加速長)の延長、エネルギーのばらつき低減や出射の絞り込みなど電子ビームの品質向上、ファイバーレーザー技術との融合などを挙げている。


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