[原子力産業新聞] 2004年6月24日 第2240号 <1面>

[原子力委員会] 長計「策定会議」が始動 サイクル政策など議論

 原子力委員会は21日、新しい「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」を策定するための第1回「新計画策定会議」を開催(=写真)した。近藤駿介議長は「現長計策定以降の5年間で、原子力を取り巻く環境は少なからず変化し、改めて指針を示す必要がある。約1年間、活発な審議をお願いしたい」と挨拶。各委員が基本的な考え方を示すとともに、当面、原子力発電の位置付けと核燃料サイクルシステムの在り方の優先審議を了承した。

 近藤議長は長計について、(1)規制と誘導という公的関与に指針を与える(2)国として計画期間に期待すべき目標と取組みの考え方を示す(3)可能な限り定量的に比較検討する――などの考え方を示した。

 次回から優先審議する核燃料サイクルシステムの在り方では、今会議でも多くの委員が具体的な考え方を述べた。明確にサイクル政策の推進を訴えたのは勝俣恒久・東京電力社長、神田啓治・エネルギー政策研究所所長、児嶋眞平・福井大学学長、田中知・東京大学教授、殿塚猷一・核燃料サイクル開発機構理事長、庭野征夫・日本電機工業会原子力政策委員長、藤洋作・電事連会長、山名元・京都大学教授などの各委員。

 勝俣委員は「原子炉設置許可申請においても再処理が実質的な許可条件であり、電気事業者として安全・品質を最重点に六ヶ所再処理工場の操業に向けて全力を尽くすことが責務」とし、神田委員は「サイクル政策は堅持すべきで、原子力政策は短期の経済的視点ではなく長期的視点が重要。高速増殖炉開発も着実に進める必要がある」とした。また福井県の「もんじゅ安全性調査検討専門委員会」の座長を務めた児嶋委員は、「2年半徹底的に検討した結論が、改造により『もんじゅ』の安全性は高まる、ということであり、早期に改造し動かすべき」と強調。このほかにも、再処理は必要ではないかとの意見が出された。

 一方、六ヶ所再処理工場の稼働を凍結した上で、サイクル政策を議論すべきとの考えを明確に示したのは、伴英幸・原子力資料情報室共同代表と渡辺光代・日本生活協同組合連合会理事の両委員。伴委員は「直接処分との比較評価が存在しないことは重大な問題。中立的かつ客観的な立場で総合評価すべき」とし、渡辺委員も「コスト試算は国際的な議論に耐える精度の高いものにして欲しい」と要請した。再処理と直接処分の総合的で定量的な比較検討の必要性については、多くの委員が指摘した。

 このほか藤委員は、「電事連が直接処分コストを試算し、同会議に提示するとの報道があったが、これは事実無根。電事連は試算しておらず、本会議に資料を提出することはない」とした。

 同会議は来月8日に第2回会合を予定、来月は16日と29日も開催する。


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