[原子力産業新聞] 2004年6月24日 第2240号 <2面>

[経産省・総合資源エネ調査会] バックエンド経済的措置のあり方 中間報告書策定で議論

 経済産業省は18日午後、東京・港区のホテルで第20回総合資源エネルギー調査会・電気事業分科会を開催、制度・措置小委員会での議論をもとにまとめられたバックエンド事業に対する制度・措置のあり方に関する中間報告案について議論を行った。消費者団体の委員らから、原子力開発利用長期計画が見直されようとしているこの時期に、過去分の費用回収も行う「措置」をまとめることなどに強い異論が出され、意見集約には至らなかった。

 制度・措置小委の植草益委員長は、経済的措置のとりまとめにあたって、後に紛争の種を残さないため、「利害関係の調整を図るのではなく、会計学、経済学、規制などからの、論理的整理に重点を置いた」と説明、原子力委員会等、今後の政府内での検討に役立ててほしいと述べた。

 小委員会で意見が分かれた経済的措置の範囲について、中間報告案は、中間貯蔵以外の使用済み燃料・廃棄物貯蔵費および屋内の再処理施設等からの廃棄物輸送費を対象とすることになった。

 バックエンド事業に関する官民の役割分担については、国の役割を、(1)基本方針の明確化(2)安全規制等の法的ルールの設定と遵守(3)国際的枠組みの整備(4)危機管理体制の整備(5)基礎研究開発と人材育成(6)国民の理解F民間事業の適切な誘導――に限定。核燃料サイクル事業も含め、民間事業の責任は「事業者に帰属することが基本」としながらも、国の政策や国際的な理由など「国が事業者の事業継続の意志に反して事業の停止を求める」場合は、「その時点で具体的事業に即した適切な議論を行う」としている。

 一方、核燃料サイクル施設の稼働率の低下や超長期性に関するリスクは、民間事業にはなじまないとの議論については、「事業者がその事業責任の一環として追うべき」としながらも、稼働率変動により事業環境が短期的に大きく変動しないなど、将来の不確定性に柔軟に対応できるよう、制度・措置の設計を行ったとしている。

 中間とりまとめによると、バックエンド総費用18.8兆円のうち、すでに引当金対象となっているものが7.5兆円、既拠出対象が2.6兆円であるのに加え、既発電分の新たな引当金対象が2.7兆円、将来発電分の新たな引当対象が2.4兆円、当期費用とするものが3.7兆円。割引率2%の場合、NUMOへの拠出金と経済的措置の合計は、1kWhあたり36銭程度となる(=表参照)。これは一世帯あたり月108円程度の負担。

 中間報告案に対しては、消費者団体の委員を中心に、長計見直しを待って経済的措置を決めるべき、これで国民や消費者の理解が得られるのか、原子力発電の意義とサイクルの意義は別、等の意見が出された。一方、電力側の委員からは、電力自由化拡大を控え今年中に結論を出す必要がある、行政の遅れは許されない等の意見、また、原子力発電は、フロントの発電とバックエンドが一体と認識している、等の見解が出された。

 分科会で意見集約に至らなかったため、中間報告は座長一任となり、必要な修正後、パブリックコメントに付されることとなる。


Copyright (C) 2004 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.