[原子力産業新聞] 2004年8月19日 第2247号 <4面> |
[中国電力] 島根3号機 進む準備工事日本で初の「県庁所在地の原子力発電所」誕生へ――。中国電力・島根原子力発電所3号機増設の準備工事が進む中、来年3月末の合併を目標に、松江市と、原子力発電所が立地する鹿島町など8束8町村との協議が進められている。合併が実現すれば、島根原子力発電所は初の「県庁所在地の原子力発電所」となる。準備工事の進む3号機の模様を訪ねた。(喜多智彦記者) 松江市中心部から車で北に約15km、鹿島町から山地を貫く長いトンネルを抜けると、30分弱で島根原子力発電所に着く。松江市からは完全に通勤圏の距離だ。 国産初の1号機島根原子力発電所サイトは北側で日本海に面し、背後は高さ150mの山地で遮られている地形。現在、46万kWの1号機、82万kWの2号機の2基のBWRが運転中。今年で運開から30年になる1号機は、BWRの実質的な国産第1号機のパイオニア的存在だ。2号機は、1989年2月の運開から15年になる。 サイトは山に囲まれているため、渓流水が豊富で、4万トンの水を貯水槽に貯めて発電所用水として利用。他の原子力発電所のように水には不自由はしないとのこと。 3号機―中国電力初のABWR7月21日に第2次公開ヒアリングが開かれた3号機は、中国電力初の改良型BWR(ABWR)。国内最大級の137・3万kWの出力を誇る。 ABWRは、柏崎刈羽6、7号機で運転実績を積み、現在は浜岡5号機、志賀2号機、台湾の龍門1、2号機などが建設中。さらに、米国で新規原子力発電所建設を目指す米エネルギー省(DOE)構想の一環として、DOEの資金援助の下、GEや東芝などが、ABWRの建設可能性調査を行っている。原子炉内臓型再循環ポンプ、改良型制御棒駆動機構、鉄筋コンクリート製格納容器などで、安全性・信頼性を向上させているのが特徴。 3号機の準備工事始まるサイトでは、3号機の本格着工に先立ち、今年3月から準備工事が始められており、6月末での工事進捗率は約3%。現在行われている準備工事は、3号機の敷地造成工事と、防波護岸を作るための人工リーフ(波消し)建設だ。 3号機サイトの1部は、小高い丘になっており(=写真右)、3号機建設にはこれを切り崩して整地する必要がある。7月中旬時点では、丘の頂上までブルドーザを上げ、丘を切り崩すための重機を上げる道路を造っている最中。削られた丘の土砂は、3号機用敷地の埋め立てや、島根原子力館に隣接する深田運動公園の拡張にも利用される。 冬の日本海は荒れる。3号機敷地前面海域での作業も、秋から冬にかけては工事ができない状況という。3号機前面には防波護岸が作られるが、護岸にあたる波を弱めるため、さらにその前面に波消しのための深さ8〜10mの「人工リーフ」が作られ、今その基礎工事の真っ盛り(=写真右)。海上に多くの作業船が出て秋までの工事を急ぐ。くい打ちを行っているラインが、将来、護岸になる場所だ。 防波護岸は、海面からの高さが約11m、長さが490mという大規模なものだ。荒れる海に備えて、さらに2つの防波堤が新たに設けられる。 3号機工事が既設プラントに与える影響でも皆無ではない。特に、2号機の放水路および放水口(=写真左)は3号機敷地にかかるため、3号機前面に付け替え工事をする必要がある。 島根3号機は、来年3月には正式着工、2006年度の本体着工を経て、2011年度には営業運転に入る予定だ。 |