[原子力産業新聞] 2004年8月26日 第2248号 <4面>

[日本原子力学会] 「科学と司法」を議論

日本原子力学会の社会・環境部会(部会長=岡芳明・東京大学大学院教授)は7月26日、東京・大手町の経団連会館でシンポジウム「市民社会における科学と司法を考える──もんじゅ判決をふまえて」を開催(=写真)した。約130名が参加、科学技術と司法に関する基調講演やパネル討論などを傾聴した。

岡部会長は、「原子力専門家として判決の技術的判断を批判することは容易だが、原子力は社会の中の技術であり、法律が社会の規範である以上、さらに一歩進んだ理解が必要ではないか。科学技術が裁判の対象になった場合、法は何を裁くのか、もんじゅ裁判を題材に考えたい」と挨拶した。

基調講演では、学習院大学法科大学院の高木光教授が「もんじゅ訴訟の教訓」として、行政訴訟と民事訴訟の2本立てであるもんじゅ訴訟の推移、福井地裁2000年判決と名古屋高裁金沢支部2003年判決の内容などを解説。併せて、同判決に対する私見として、行政機関に厳しい審査をすることは評価できるが、事実上、専門技術的裁量を否定し、相対的安全性の原理に反している疑いが強い、とした。

パネル討論では、弁護士の山内喜明氏、富士常葉大学の吉村秀實教授(元NHK解説主幹)、東洋英和女学院大学の岡本浩一教授が科学技術と司法についてそれぞれ主張。山内氏は、「裁判は裁判官が安全だと思わないと勝てない。原子力関係者は、これまで十分に説明責任を果たして来たか考える必要がある。また、50年前に出来た原子炉等規制法の整備が最大の問題」と指摘。吉村教授は、「原子力安全委員会の防災部会委員の業務を通しても、原子力関係者の唯我独尊的な面を感じる。判決に対する批判ではなく、なぜこうした判決が出たか、その要因を追求すべき」とした。

岡本教授は、モラルハザードと組織風土について、「誰に頼まれたかによって仕事の優先順位が決まることが多く、何が原因かより誰の責任かを優先する属人風土が、組織における不正・違反を容認しやすい」と指摘した。


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