[原子力産業新聞] 2004年9月2日 第2249号 <3面>

[米、ロ] ロシアの余剰プルトニウム 貯蔵施設が完成

 米国とロシアの協力により、ロシアの核兵器由来の余剰プルトニウム保管施設が完成、15トンのプルトニウムを貯蔵する用意ができている。このプロジェクトについて、ロシア・ノーボスチ通信社の評論家、タチヤナ・シニツィナ氏の解説を紹介する。(ノーボスチ通信社配信)

 チェリャビンスク郊外と南ウラルに建設された新しい核物質貯蔵施設へのプルトニウム搬入が待たれている。この貯蔵施設は「マヤック」という特殊企業の敷地内にあり、防衛目的に余分となったロシアのプルトニウム25トンを受入れることができる。ロシア連邦原子力機関からの情報によると、この搬入はいつでも始められるという。

 この貯蔵倉庫は、核軍縮米ロ協定を遂行するために建設された。安全で信頼できる核物質輸送、保管、大量破壊兵器の撲滅、拡散防止などに関する協定が、1992年6月にワシントンで、当時のエリツィン大統領と(父)ジョージ・ブッシュ大統領により署名された。

 協定の骨子は、プルトニウムを使う新たな核兵器を製造しないこと、両国の「余分」とされる核物質は再利用に回すことである。

 この協定は、1993年9月、クリントン政権時にも、同じくワシントンで調印された。そのさい実務レベルでは、米国防総省とロシア原子力省(現連邦原子力機関)が、核物質貯蔵施設建設にあたり、安全で環境保護上、信頼できる貯蔵、核物質の保全、教育、作業などで合意した。

 他に類を見ないこの施設建設計画は、アメリカの専門家も参加し、ロシアの専門家によって作成されたが、アイディアと主要ノウハウはロシア側が考えたもの。施設の建設は、米国側からは国防総省工学グループと「ベクテル」社、ロシア側からはモスクワ市、サンクトペテルブルグ市、チェリャビンスク市、サロフ市(沿ボルガ地方)の専門家が参加、共同作業で進められた。

 米国はプロジェクトに4億ドルの資金を投入、うち1億3900万ドルは施設の建設に充当された。残りの資金は、プルトニウム用特殊コンテナの製造と、廃棄作業、運用マネジメントなどの構築に費やされた。

 貯蔵施設は、壁厚7m、仕切り厚は8mの鉄筋コンクリート構造。核物質が保管されるコンテナは、国際原子力機関(IAEA)の求める厳しい強度テストに合格、3つの保護用仕切りを備えている。貯蔵建物には、全工程を管理するシステム、記録装置、放射線や火災防止監視システムも導入されている。

 建設の際には、自然現象によるあらゆる影響、技術的性格の緊急事態、テロ行為、地域の軍事衝突まで念頭に入れて進められた。施設は耐火性であり、地震、燃料を満タンに積んだ飛行機の落下、空爆、大砲撃、にも耐えられる構造である。さらには、建設地域の気候特性、積雪、風力負荷、極度な厳寒、暴風、竜巻にも耐えるように設計されている。

 貯蔵施設は100年稼働できるように設計されている。この期間は残存する核物質の状態を管理し、再加工し、さらには今後原子力発電所用の新燃料として使うために残存物を除去することも可能な期間である。


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