[原子力産業新聞] 2004年9月16日 第2251号 <2面>

[FNCA] 放射線育種でWS ジョクジャカルタで

 インドネシアのジョグジャカルタ市で、8月30日から9月3日まで、文部科学省主宰のアジア原子力協力フォーラム(FNCA)放射線育種ワークショップが開催された。インドネシアのサラギ農業大臣は挨拶の中で、放射線を使った品種改良による農業生産向上へ期待を表明した。また、今回のワークショップの期間中、ジョグジャカルタの国立開発大学で「放射線育種」に関する公開講座が開催され、農学部学生を中心に約60名が参加した。

 放射線育種プロジェクトでは、「ソルガム(コウリャン類)とダイズの耐干ばつ性(耐旱性)」、「ランの耐虫性」、「バナナの耐病性」のテーマで研究開発が推進されている。「ソルガムの耐旱性」には、インドネシアと中国が参加し、両国で有望な種子を交換、ガンマ線照射を行って耐旱性向上を目指している。突然変異と交配により、耐旱性を有する糖含量の高いソルガムを開発、応用の段階に入ったと報告された。ソルガムは、実は食糧、茎は家畜飼料と幅広い用途があるうえ、栄養価に優れているため、潜在性の高い作物として、アジア地域での干ばつ地でも育つ強い品種の開発が求められている。

 本プロジェクトのこれまでの成果をまとめた「突然変異育種マニュアル」が完成した。これは、突然変異育種を学び始めた人から、実務に携わる人まで広くを対象としたもの。この種のマニュアルは、IAEAが1970年代末に出版しているが、本マニュアルは、それ以降の知見も取り入れたもの。本マニュアルは、近日、FNCAのウェブサイト(www.fnca.jp)に掲載され、誰でも閲覧できるようになる予定。

 また、アジア各国の突然変異に関する情報を網羅している「突然変異育種データベース」2004年度改訂版が完成した。このデータベースは、FNCAウェブサイトからダウンロードでき、世界の突然変異育種研究者の貴重な情報源となるもの。


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