[原子力産業新聞] 2004年9月24日 第2252号 <2面> |
[東北大学] ベリリウム7の半減期が1%短縮【21日共同】放射性のベリリウム7原子を、C60と呼ばれる球状の炭素分子の内部に入れると、ほかの原子へと崩壊する現象が加速され、放射性元素の寿命を表す「半減期」が1%近く短くなることを大槻勤・東北大助教授(核・放射化学)らの研究チームが21日までに実験で確認した。 半減期は基本的に元素固有の量。ベリリウム7の半減期は電子が環境に影響されて0・1%前後変わることは半世紀前から知られていたが、これほど大きな変化が確認されたのは初めて。ナノテクノロジー素材であるC60の新たな機能の開発にもつながる発見として注目される。 C60は炭素原子60個がボールの表面に並んだ形の分子で、直径約1ナノメートル(ナノは10億分の1)。内部は中空になっている。 大槻さんらはC60と炭酸リチウムを混ぜ、陽子を照射することで、リチウム原子から変わったベリリウム7の原子1個を内部に含むC60を作り出した。 C60内部のベリリウム7原子は自らの電子1個を原子核に取り込み、リチウム7に崩壊する。グループは、その際に放出されるガンマ線を170日間測定し、C60内部に閉じ込められたベリリウム7原子の半減期が52・68日であることを突き止めた。これは金属のベリリウムの中にある場合の半減期である53・12日よりも0・83%短かった。 大槻さんによると、C60内部は炭素原子の電子が多く、その影響でベリリウム7の電子の1部が原子核に近づくため、電子を取り込み、リチウム7へと崩壊する反応が起きやすくなっているとみられる。 |