[原子力産業新聞] 2004年9月30日 第2253号 <2面> |
[IAEA] 頻発するRI輸送問題世界的に「テロとの戦い」が喧伝されるなか、国際原子力機関(IAEA)はこのほど、病院で診断や治療に使われる短寿命ラジオアイソトープ(RI)などの放射性物質の国際輸送で、最近、輸送拒否や遅延が増えているとし、地域によっては病院での診断や治療に大きな影響が出る恐れがあると警告した。 全世界の大部分の国々で、癌治療、心臓発作の診断、医療器具の滅菌などに使われるRIは、輸入に依存している。医学界はIAEAで開かれた会議で、緊急に国際輸送を要するRIで輸送問題が増えていると警告している。 IAEAの放射性物質輸送安全担当者によると、航空会社や輸送業者によるRI輸送の拒否・遅延が増えると、患者の癌治療ができなくなるうえ、運行している航空会社が少ない地域で、航空会社による輸送拒否がおこれば、その地域では必要なRIの供給が滞り、病院が立ち行かなくなる恐れがあるという。 医療用・産業用の放射性物質輸送は、放射性物質の安全輸送に関するIAEA国際規則に従って、国と航空業界による規制を受ける。放射性物質は、43年間運用されているIAEA基準に基づき、極めて安全に輸送されてきている。現在の制度に欠けているのものは、医療用RIの迅速な配送を促進するための取り組みと、他の貨物とは別の取り扱い措置だという。 航空会社によっては、放射性物質の輸送を行わないことを方針としてところもある。また、国の厳しい規制によって航空会社が必要要件を満たすことが非常に難しくなっている場合もあり、輸送の事実上の障害となるボトルネックになっている。 船舶によるRIの国際輸送も、遅延や拒否にあっているといわれている。これらには、ペースメーカー、医療機器、発電のほか、食品の安全性向上、配管の微細なひびの検査、病気を媒介する昆虫の駆除など、日常的に利用されている放射性物質が含まれる。 |