[原子力産業新聞] 2004年10月7日 第2254号 <3面>

[EU] 4基の廃炉に10億ユーロ

今年5月にEUに加盟したリトアニアとスロバキアにある原子力発電所4基の廃炉を支援するため、欧州委員会(EC)は9月29日、総額10億ユーロ(約1360億円)の財政支援を行う方針を決めた。原子力シェアが70%を越えるリトアニアでは、発電所閉鎖による経済悪化も懸念されている。

リトアニアは、運転中のイグナリナ原子力発電所(=写真、RBMK、150万kW・2基)について、1号機は2005年までに、2号機は2009年末までに停止する約束。スロバキアは運転中の6基のうち、VVER440・V230型炉であるボフニチェ1号機を2006年末までに、同2号機を2008年末までに停止する約束だ。

EUは、これらの原子炉の廃炉や廃棄物の処理のため、2007年から2013年の間に、リトアニアに8億1500万ユーロ(1100億円)、スロバキアに2億3700万ユーロ(約320億円)、合計10億5200万ユーロの財政支援を行う。この資金は主に廃炉に用いられるが、エネルギー供給の確保や、原子力発電所従業員の再雇用など社会的分野にも利用できる。ECでは、援助額は発電所への投資額の約15%に相当するとしている。

総出力300万kWのリトアニア・イグナリナ原子力発電所は、同国の電力需要の70%以上を供給、ベラルーシなどにも電力輸出を行っており、同発電所の閉鎖による経済影響は決して小さくない。リトアニア中央銀行が行った試算では、イグナリナ発電所の閉鎖により、将来20年間にわたって合計320億リタス(約93億ユーロ)の損失が発生するという。EUによる財政支援は、直接廃炉に関わるコストを支援するにすぎず、エネルギー価格上昇や電力輸出の喪失などで、リトアニアのGDP成長率は、年1%低下するとも予測している。


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