[原子力産業新聞] 2004年10月21日 第2256号 <4面>

[関西電力] 美浜事故 関電取りまとめの概要A

 既報の通り、関西電力は9月27日、美浜発電所3号機二次系配管破損事故に関するこれまでの原因調査の状況、当面の取るべき対応などについて、取りまとめを発表した。今号では先週に引き続き同報告書の中から、原因究明への課題、品質保証・保守管理上の問題点の調査、二次系配管肉厚管理の更なる充実が掲げられた「今後の課題」を紹介する。

今後の課題

 以下の対策を今後の課題として実施する。なお、今後とも引き続き必要に応じて新たな課題を追加することとする。

(1)原因究明のための課題

a.破損メカニズム解明のための解析、試験

 オリフィス下流側での減肉事象の発生、進展の状況を確認するとともに当該破損配管の減肉の特徴を検証するために以下の解析、試験を実施中である。

(a)流動解析

A系配管(破損配管)及びB系配管等の配管構成を模擬して、計算機による流動解析を行い、オリフィス下流側の流況、流れの乱れ分布を確認する。

(b)流況可視化試験

A系配管(破損配管)及びB系配管等の配管構成を模擬して、オリフィス下流側を可視化した状態で流況、圧力変動を確認する。

(c)材料分析

A系配管(破損配管)とヒートナンバーが同じB系配管の残材を成分分析することによりクロム等の影響を確認する。

b.二次系プラント挙動シミュレーション

 復水配管破損後に脱気器水位が低下し、給水流量が低下し原子炉自動停止に至った二次系のプラントシステム挙動を解析し、実際のプラント挙動との比較検討等を実施し、炉心の冷却状態等の直接計測できないデータ及び復水管破損箇所からの流出流量等のデータを推定する。

c.破損事故の影響範囲に関する調査

 復水配管の破損により多量の復水が流出した際の破口部の衝撃力やその影響範囲を解析により確認する。また、その復水が蒸気及び水となり電気設備に浸入したことにより接地が発生したものと推定されるため、タービン建屋の機械、電気設備等に対する影響を調査し、健全性評価の上、必要な対応を検討する。

(2)品質保証、保守管理上の問題点の調査

 今後、原因究明を踏まえ品質保証上の問題点を検討し、適宜対策を講じることとするが、今回の事故の一因に二次系配管肉厚管理業務における当社の関与不足があることに鑑み、調達管理方法などについて課題を整理し、品質保証、保守管理について対策を実施する。

a.品質保証の観点からの今後の調査

美浜3号機が運転を開始して以来、当該破損部位が管理票から漏れており、さらにこのことが是正されてこなかった原因を究明するため、二次系配管肉厚管理に関して、PWR管理指針制定以降現在に至るまでの各段階において、品質保証・保守管理の観点から調査を実施する。主な調査事項は以下のとおり。

 業務の計画については、PWR管理指針に基づくスケルトン図・管理票の維持管理方法、当社と協力会社の役割分担ならびに人的ミス等のリスク要因の考慮状況について調査する。

 調達管理については、スケルトン図・管理票の管理に対する当社確認状況、点検箇所の記載漏れ等の不適合事象の連絡の状況ならびに調達先に対する監査状況について調査する。

 評価及び改善については、不適合管理、是正処置と予防処置の状況ならびに減肉データの活用状況について調査する。

 資源の運用管理については、担当者の力量及び労働安全に対する意識について調査する。

b.補修工事における調達管理の厳正化

a項での調査結果を踏まえ、二次系配管肉厚管理調査工事以外の補修工事に関して反映事項を検討し、標準仕様書等への反映を計画する(2004年末目途)。

c.保全体制の再構築

 確実な保全業務の運用を目指すために、社内関係者及び社外有識者で構成する「原子力保全機能強化検討委員会」(原子力部門以外から委員長を選任する)を設置し、現行の保全体制の課題を整理、メーカ等を含む体制の再構築等の検討を開始した。

 これまでの検討では、以下の方法により課題を抽出しているところである。

・二次系配管肉厚管理調査工事等の詳細な業務フローを作成することにより、業務プロセスが不明確な点など問題点を明確にする。

・現場マネジメント層、現場担当者レベル、メーカ、協力会社の現場各層の問題意識をフリーディスカッションにより洗い出す。

・マスコミ、有識者、各種団体、一般等、外部からの指摘事項を整理し、第三者的な視点から問題点を整理する。

 今後は、以下の各テーマ毎に根本的な問題点を明確化するとともに、効果的な対策を検討する。

・当面のテーマ案:現行の保全業務フローの問題点の改善、調達管理の厳正化、メーカ・協力会社との役割の明確化、本店・支社・発電所の役割の明確化、情報伝達方法・コミュニケーションの改善など

・次ステップのテーマ案:組織・マンパワーの問題、個人の意識・スキルの問題、役職者のマネジメントの問題など

 なお、社外の品質管理、法律、原子力の専門家に委員としてご就任いただいており、第三者の目からもご意見を頂き、保全体制の再構築を図る(2004年末目途)。

(3)二次系配管肉厚管理の更なる充実

 今回の配管肉厚管理調査の過程で配管肉厚管理方法の点でも改善すべき事項が顕在化していることからPWR管理指針の高度化を図る。

a.肉厚管理の充実

まず、二次系配管肉厚管理の充実を図るため、今後、定期検査を開始するプラントから順次、主要点検部位について、「余寿命が二年以下となる前に点検を行なう」を改め、「余寿命が五年以下となる時期に点検を行なう。さらに、余寿命が五年以下の場合は取替・溶接補修までの間は、定期検査において毎回点検を継続する」と変更した(9月24日決定)。

 さらに、減肉管理データの拡充を図るため、至近三回以内の定期検査において、その他部位の未点検箇所は全て点検する。

b.PWR管理指針の高度化

 これまでの実機計測データの集約による見直しや設備実態に応じた運用マニュアルになっているかという観点での見直しを実施し、以下の点を改善する。

・当社における過去の減肉データの分析、取替え実績の整理を行い、どういった部位がどのような減肉率であるかを整理する。また、その他の系統に関して、

減肉傾向を持つ箇所もあるため、肉厚管理を行う範囲や具体的運用方法等について見直す。

・各電力よりデータを集約するとともに、最新の海外情報により、PWR管理指針の見直しを学協会等で実施する動きがあり、当社としても積極的にこれに参加する。


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