[原子力産業新聞] 2004年10月28日 第2257号 <5面>

[スイスNAGRA] グリムゼル試験場が20周年A

先週号に引き続き、スイス放射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)に勤務する加来謙一氏の寄稿で、スイスの放射性廃棄物処分事業の現状、およびNAGRAとその地下研究所について紹介する。

スイスの放射性廃棄物の現状

スイスで排出される放射性廃棄物は、処理・処分の観点から、原子力発電所の運転により発生する運転廃棄物、原子力発電所の解体により排出される解体廃棄物、医療・産業・研究所廃棄物の3つに分類される。これらはそれぞれ中間貯蔵施設に保管され、最終的には2つの最終処分場に、廃棄物の特性に応じて分類されて処分される予定。1996年に発電所から発生する廃棄物の中間貯蔵施設(ツヴィラーグ)(=写真下)の建設に着手、2000年に操業が開始された。2001年7月には最初の使用済み燃料を受け入れ、同12月には最初のガラス固化体の受け入れが実施された。

一方、医療・産業・研究分野で発生した廃棄物には連邦政府が責任を負っており、ポール・シェラー研究所が連邦政府からの委託を受けて、ツヴィラーグに隣接した中間貯蔵施設に1991年から貯蔵している。最終的にはスイス国内で発生する全ての放射性廃棄物を、中低レベル放射性廃棄物と中高レベル放射性廃棄物に分けて、2つの最終処分場に地層処分する予定である。

NAGRAについて

NAGRAは、原子力発電所を有するスイスの4つの電力会社と連邦政府が出資する共同組合である。1972年に設立され、30年以上に渡って、放射性廃棄物処分の処分技術の研究開発やサイトの選定等を実施してきた。最近はスイス国内のプロジェクトからの知見を活用して、諸外国への技術協力も積極的に行っている。

地下研究所

スイスには花崗岩を対象としたグリムゼル試験場と、オパリナス粘土を対象としたモン・テリ試験場の2か所がある。これらの地下研究所は主に高レベル放射性廃棄物の安全な処分を実施するための研究を行うことを目的として設置された。

グリムゼル試験場はアルプス山中のグリムゼル峠付近にある水力発電所のトンネルから分岐して建設された地下研究施設である。NAGRAは地層処分研究を推進するために1983年、同試験場を建設、以来20年に渡って様々な研究開発プロジェクトを実施してきた。本試験場のプロジェクトには、ドイツ、フランス、日本、スペイン、スウェーデン、台湾、米国、欧州連合等が参加している。

モン・テリ試験場は、1996年に各国関係機関が国際共同プロジェクトを実施する試験場として設立された。同試験場ではオパリナス粘土を対象として岩盤特性調査研究等が実施されている。NAGRAは本試験場で得られた岩盤力学、水文地質学、地球科学等に関する情報を統合し、「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書に活用している。(続く)


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