[原子力産業新聞] 2004年10月28日 第2257号 <8面>

[書評] 原子力を開く世紀(改訂版)日本原子力学会編

1998年に初版が出て、5刷合計1万6000冊も発行されたといわれる、原子力分野での隠れたベストセラーの改定版。作業は、日本原子力学会の「原子力教育・研究」特別委員会(委員長・工藤和彦九大教授)のグループがボランテイアとして行ったが、編集幹事であった日本原子力文化振興財団の熊谷氏は大変な努力をされたと聞く。

昨今、とくに原子力については、公平、平易でしかも学問的に正確な本が求められ、本書はそれを目標にしたと序文にあるが、これはおおむね成功していると言えよう。全国高等学校長協会の推薦図書となっており、高校教師の副読本、大学の教養課程での参考書として適している。また一般の人が参考書と使え、役立つ本でもある。

初版が出てから6年と比較的短い期間であるが、この分野では大きな事件も起こり、関係省庁の体制も変わった。事件としてはやはりJCOの臨界事故が大きい。高速増殖炉の位置づけも変った。炉心シュラウド事件、維持基準、もんじゅ裁判、高レベル廃棄物の処理処分体制、放射線利用についての進歩、また核不拡散に関して新しい動きなども改訂、加筆された。全般に最も新しいデータを入れるように努力された跡が見える。

見開きごとにイラストや図表が配置され読みやすさに格段の努力が払われている。初版本で目立った重複は大幅に減り改善された。また索引も新たに付けられ、頁数も初版と比べ40頁増えが、値段は2000円と据え置かれている。

是非手にとって一読し、リファレンスとして座右に揃えておくことをおすすめする。B5判、349頁。定価2000円(税込み)。


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