[原子力産業新聞] 2004年11月18日 第2260号 <2面> |
[原産] ビジョンとロードマップ公表日本原子力産業会議は5日、常設委員会である原子炉開発利用委員会(委員長・神田啓治・エネルギー政策研究所所長)が取りまとめた報告書「2050年の原子力─ビジョンとロードマップ」を公表した。 報告書は、今世紀半ば頃の時点で、原子力が果たし得る姿を、「発電に寄与する原子力」、「原子力による水素の製造」など、11項目にわたり構想するとともに、それを実現するために解決すべき課題、実施すべき行動の道程について提示したもの。 ビジョンでは、2050年の人口を現在の8割程度、GDPを現在と同程度と想定。一方地球環境の保全のために、二酸化炭素排出量を1990年の60%に設定し、発電用として原子力9000万kW、水素製造用の熱源としての原子力2000万kW(熱出力)の利用を想定している。この場合、原子力による発電電力量は全体の約60%を占め、現在の2倍となる。 2020年頃からは、自動車用と定置型燃料電池が、環境負荷低減のために普及、燃料の水素は2050年頃にはエネルギー消費の1割を占め、しかもその7割が原子力の熱利用で製造されると見込む。 一方、仮に原子力を段階的に廃止するシナリオを想定した場合には、再生可能エネルギーを最大限利用(一次エネルギーの18%、発電電力量の34%)しても、天然ガス等が大幅に使用され、大気中の二酸化炭素の削減に、回収・固定化を行う必要がある。さらにエネルギー自給率も現状維持のままで、原子力利用シナリオの場合の半分以下になると予想されている。 また、ビジョン実現のための課題・行動は、「地域社会との共生・共益」、「電力市場自由化のもとでの原子力プラント建設」、「水素エネルギー社会への貢献」、「原子力産業の国際化」など7つの主要項目にまとめ、ロードマップとして示した。 報告書全文は、原産ホームページ(www.jaif.or.jp)に掲載している。 |