[原子力産業新聞] 2004年12月2日 第2262号 <3面>

[レポート] 松木良夫駐在員のウクライナ便り

【11月29日=キエフ松木良夫】ウクライナでは、10月31日に大統領選挙が行われたが、いずれの候補も過半数を超える得票に至らなかったため、上位2名の候補者による決選投票が11月21日に行われ、僅差で現首相のヤヌコビッチ氏の当選が、ウクライナ中央選挙管理委員会から発表された。

しかし、この決選投票で大きな不正があったとして、候補者の一方である野党代表のユシチェンコ元首相の支持者達が、29日現在まで、首都キエフにおいて大規模な集会・デモを行い、その規模は広がりつつある。また、与党側候補者の支持者による集会・デモも始まり、キエフ以外の地域でも、同種の集会・デモが行われている。しかし、現在までのところ、集会・デモ等は平穏に推移し、暴力行為の発生は見られない。

決戦投票に残った2候補のひとりヤヌコビッチ氏は、現大統領が2年前に首相に任命した東ウクライナ地方の新興財閥出身者。

もうひとりのユシチェンコ氏は、第2次世界大戦前はポーランド領だった西ウクライナ地方出身の元・ウクライナ中央銀行総裁で、首相経験もあるが、4年前に議会で首相の座から罷免された経歴を持つ、現在の野党第一党党首。同野党は、現在の議会の中の最大勢力ではあるが、過半数は確保しておらず、社会党との連立政権を目指している。

原子力への依存度が高いウクライナでは、いずれの候補が大統領に就任しても、原子力推進政策の方向が大きく変わる可能性は小さい。しかし、西側諸国との連携・協調の点で、多少の違いが現われる可能性はある。

まず、ヤヌコビッチ現首相はロシアとの協調を選挙公約に掲げており、原子力推進政策においても、ロシアとの協調路線が予想される。

一方の野党第一党のユシチェンコ党首も、首相時代には、経済改革政策と共に、原子力推進政策を進めていた。しかし、それまで原子力規制用語として用いられていたロシア語を撤廃し、ウクライナ語に翻訳するなど、ロシアとの距離を置きつつ、一方では安全性向上対策などの点で、西側諸国との協調を計ろうとしていた。

なお27日、大統領選挙のやり直し投票が議会で決定され、これに向けた動きが始まったほか、現政権寄りのテレビ報道では、キエフを含むウクライナの北西部に対して、東部工業地域、南部クリミア半島、及びオデッサまでの黒海沿岸地域を含むウクライナ南東部を分ける議論が紹介されている。現在商業運転開始に向けて最終調整が進められているフメルニツキー原子力発電所2号機(K2)とロブノ原子力発電所4号機(R4)は、いずれもウクライナ北西部に位置する。


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