[原子力産業新聞] 2004年12月9日 第2263号 <3面>

[米・DOE] 高効率で水素を製造

米エネルギー省(DOE)は11月30日、第4世代原子炉からの熱と電気を利用して水素を製造する研究プロジェクトで、酸化物固体電解質を使い、高い効率で水素製造に成功したと発表した。また、水素経済への期待の高まりを受け、11月には首都ワシントンに「水素ガス・スタンド」がオープンしている。

この研究プロジェクトは、アイダホ国立環境工学研究所(INEEL)とセラマテック社、ワシントン大学等が共同で研究を進めているもので、同社の開発した酸化物固体電解質を使った高温水蒸気電解法で、高温の水蒸気を電気分解することにより、通常の水の電気分解に比べて、必要な電力を大幅に減らすことに成功したという。また、装置の大きさを従来の3分の1にし、装置の価格低減に成功した。

開発チームは、DOEから200万ドル(約2億円)の資金援助を受けて開発を進めている。今後、装置の低価格化、耐久性改善、酸化物固体電解質の効率改善などに取り組む。

高温水蒸気電解法は、いわば燃料電池を逆作動させる仕組み。燃料電池で水素と酸素を化合させれば、水蒸気と電気が得られるが、同電解法では高温水蒸気と電力から、水素と酸素を得る。700〜900℃の高温高圧水蒸気を電解し、水素製造に必要な電気エネルギーの一部を熱エネルギーで補い、必要な電力を減らし、経済性を高める。

このグループは、第4世代炉から供給されうる熱と圧力を前提に開発を行っている。酸化物固体電解質を用いることで、従来型の電解法と比べ、1.5〜1.7倍の効率を達成しているという。

DOEが2003年11月に立ち上げ、日本やEUなど16か国・地域が加入する「水素経済に向けた国際パートナーシップ(IPHE)」開始から1年が経ち、同省はすでに3億5000万ドル(350億円)の資金を投入している。ブッシュ大統領は2003年1月の一般教書演説で、「今日生まれた子供が最初に運転する車は、汚染物を出さない水素動力の車かもしれない」と述べ、水素研究に12億ドル(1200億円)を投入すると公約している。

このような水素利用への気運の盛り上がりを受け、大手石油会社のシェルは11月10日、ジェネラル・モーターズと共同で、首都ワシントンで初の「水素ガス・スタンド」をオープンした。

これは、燃料電池車への水素供給のため、ガソリンから水素を生産する装置を備えたもの。DOEの実証計画の一環として進められており、ワシントンからニューヨーク市までを「水素回廊」でつなげようという構想。DOEは今後5年間に1億9000万ドル(約190億円)を投入、民間企業も同額を投入する計画だ。


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