[原子力産業新聞] 2004年12月9日 第2263号 <4面>

[原産] 2050年の原子力ビジョン

2050年の原子力エネルギーの定量的な役割などを念頭に、望ましい原子力利用の姿を考えました。

(1) 発電に寄与する原子力

最終エネルギー消費に占める石油の割合が大幅に減り、電力とガス、水素の割合が増大、2050年には21世紀初頭に約1/4であった電力の割合が3割強になっています。原子力は電力生産の主役を担っており、1次エネルギーの1/3を供給し、電力の6割を生産しています。

原子力と再生可能エネルギーの利用が増えたことにより、1次エネルギー供給の輸入依存度は大幅に改善されました。CO2の排出量も1990年水準の6割程度にまで減らすことができています。

(2) 原子力による水素製造

水素が、2020年代から自動車用などの燃料電池の燃料として普及し始め、2050年には最終エネルギー消費の1割余を占めるまでになっています。原子力は水素の約7割を生産するため利用されています。

(3) 原子力開発利用に関する合意形成と制度整備

社会の原子力に対する信頼を回復するために、法制度、行政組織、研究開発組織などに対する抜本的な改革が実施されてきました。この結果、規制行政、施設運転管理、研究開発活動などについて、品質マネジメントおよびその評価システムが整備され、公正性、公平性、透明性を一層備えた運営が行われ、国民の合意が得られています。

(4) 地域社会と共生する原子力施設

原子力施設との共生を選択した地域では、地域社会の福祉機能の充実発展がはかられ、原子力関連産業により雇用が拡大されました。原子力施設は名実ともに地域と共生する施設となっています。

(5) 業界間規制の緩和で自由なエネルギー市場

エネルギー業界では、地域独占が緩和されるとともに、各エネルギー種別の垣根となっていた業界間規制が緩和され、競争市場が形成されています。原子力事業は自由化されたエネルギー市場で民間主体で進められてきています。

(6) 多様化する原子力立地

日本の原子力施設は、需要地に近い場所に新たに原子炉施設が建設されるなど、次第に立地点が多様化してきています。

運転を停止した原子力発電所は数年間閉鎖された後に数年間をかけて廃止措置が講じられ、跡地には新たな原子力発電所等が建設・稼動しています。また、改良発展型/革新型の軽水炉、モジュラー型高温ガス炉、燃料サイクル施設と一体化した高速増殖炉などの中から、選ばれた原子炉が建設され、稼動しています。

(7) 国際エネルギー情勢の改善 (略) (8) 世界における原子力利用の進展

世界各地において地域社会における信頼できる良き隣人としての地位を得るまでに原子力利用が進展しています。アジア諸国や欧米諸国などでは新規の原子力発電所が建設されており、原子力は電力生産のみならず、水素生産、海水脱塩、地域冷暖房などの熱供給にも使われています。第4世代原子力技術開発のいくつかのシステムはすでに実用化されています。さらに次世代の技術開発に向けての努力も始まっています。

(9) 原子燃料サイクルシステムの整備

軽水炉燃料の高燃焼度化がはかられ、使用済み燃料は中間貯蔵施設あるいは地層処分施設において管理されてきました。また一部の国ではプルサーマルも選択されてきました。さらに経済性の高い高速増殖炉サイクルシステムをロシア、欧米諸国と協力して実現させたわが国では、この原子燃料サイクルシステムも実現しています。

(10)放射性廃棄物処分の進展

高レベル放射性廃棄物や超ウラン元素廃棄物の地層処分が開始されています。また、先進国においては、マイナーアクチニドの分離・変換の実用化が進められています。

(11) 世界で活躍する日本の原子力産業

世界で建設されている原子力発電所の建設業務の一部は、国際化した主要企業とのグローバルアライアンスの下で日本企業も分担しています。さらに、原子燃料サイクル施設や関連システムの建設も同様に手がけています。


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