[原子力産業新聞] 2005年1月27日 第2268号 <4面>

[原産・基盤強化委員会] フランスの原子力人材養成

技術者の高齢化と少子化などにより、原子力発電所の保修等に関する技術と経験の伝承に危機感が持たれるなか、日本原子力産業会議の基盤強化委員会は、人材問題小委員会を立ち上げ、対処方策を検討してきた。この活動の一環として、昨年12月、東京工業大学の藤井靖彦教授を団長とする調査団をフランスに派遣、同国における原子力教育や人材確保・育成について調査を行った。今回は、同調査団に参加した日本原子力発電・直営化企画推進グループマネージャーの關雅彦氏に、調査の概要を報告して頂く。

はじめに

原産の基盤強化委員会・人材問題小委員会が、「将来の人材確保を目指して」を提言したのが2003年6月。この提言を具体化する活動がその後も続けられている。

今回その1環として、日本において、原子力教育に関して各企業、研究機関、大学などが互いに教育インフラを活用しあうことを目的に、インターネットを使ったネットワークづくりを目指す「NES−0net(Nuclear Education System Network)」を検討している。これを立ち上げるために、先行するヨーロッパの「ENEN(European Nuclear Education Network)」を調査することになった。

またヨーロッパの原子力大国フランスの人材確保・育成の実態も併せて調査することとし、東工大の藤井靖彦教授を団長とする調査団が、昨年暮れに派遣された。

メンバーは藤井教授のほか、長谷川信(核燃料サイクル開発機構・東海事業所開発調整室長)、三浦研造(原産計画推進本部第1グループリーダー)、北村俊郎(原電直営化企画推進プロジェクトチームリーダー)と、筆者(關)である。

仏シャロン フラマトム工場と保修実証センター

今回の調査は、まずパリから南東へTGVで約2時間のシャロンから始まった。以下訪問先別にその結果の概要を報告したい。

セントマルセル工場

( フラマトムANP社、12月8日午前)

対応者=M・カクゾロスキー氏(溶接部長)他

フランス内陸にあるシャロン・セントマルセル工場は、ソーヌ川を利用した船積みができる原子炉大型構造物の製造工場で、世界中からの受注で活気に満ちていた。

テクニシャンやワーカーが、3交替制で1年間休日なしで操業、PWRの原子炉圧力容器上蓋や蒸気発生器などを製造しており、納入先は、フランスはもちろんアメリカ、中国、南アフリカなどに及んでいる。

原子炉の主要構造物の溶接は、コア作業のひとつであり、溶接工の人材を養成するため、構内に溶接専門の研修所がある。フィンランドで初号機を建設するEPR(欧州加圧水型炉)用機器も見ることが出来た。 PWR保修実証センター

(CETIC、シャロン)12月8日午後

対応者=P・ルナール所長

CETICは、保修の品質を保証するための保修手順の承認や、道工具類の認定を行なう使命を持った訓練施設で、EDF社とフラマトムANP社の共同出資で作られた。発電所で事故があった場合には、原因究明のため事故を再現し、診断、解決の方向を探り、訓練も行う。蒸気発生器や実機同様に水を張った炉心及び燃料プール、燃料交換台車があり、フランス全土の発電所や国外からの運転員や保修員が、年間延べ650人研修に来ており、高い稼働率を誇っていた。最近は、原子力発電所のテロ対策のため貴重な一般用のPA施設にもなっている。

まとめ

フランスが原子力先進国として、教育面でユーラシアをリードしている姿が見られた。また、フランスの合理的な教育システムは、新たな原子力時代に相応しい人材育成を着実に実践しており、同じく天然資源に恵まれない我が国が基幹電源としての原子力を安全に維持していくため大いに参考になると思われる。

スポークスマン養成研修も

フラマトム本社(パリ)

緊急時訓練 12月9日午前

対応者=P・フリポノー氏(技術訓練・緊急時支援センター長)

TMI事故を契機に、EDFを技術的支援する契約で1985年から月1回行なわれている緊急時訓練を見ることが出来た。フラマトム本社地下の緊急時対策室における訓練は、事故のシナリオが知らされないまま行なわれ、シナリオはEDFが作り、電話やFAXで刻々と伝えてくるため、緊張感があった。常時1チーム13人が拘束され、5チームが編成されている。

対策室にはフランス全土の原子力発電所58基の配管図、配線図等が揃えられており、同じフロアには、緊急時の対応を考えたり系統理解のため、12のモニターを備えた運転シミュレーター室が隣接していた


Copyright (C) 2005 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.