[原子力産業新聞] 2005年2月10日 第2270号 <3面> |
[レポート] 環境に優し いバイオ肥料 FNCAアジアで利用広がる(上)アジア原子力協力フォーラム(FNCA)バイオ肥料ワークショップが1月24〜28日、ベトナムのハノイで、開催された。 日本の文科省とベトナム科学技術省(MOST)の共催、ベトナム原子力委員会(VAEC)・原子力科学技術研究所(INST)、ベトナム農業科学研究所(VASI)が開催機関となり、日本原子力産業会議が協力、中国、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、日本、ベトナムから、20名が参加した。 このプロジェクトは、空中の窒素を植物が利用できる形態に変える窒素固定など、微生物が持つ機能を「バイオ肥料」として利用することで、アジア各国の作物収量の増加や、化学肥料の利用量を減らし、環境保全に貢献することを目的とした5年間のプロジェクトで、今年が3年目。 開会では、ベトナム原子力委員会のタン委員長、INSTのトゥアン所長、日本側プロジェクト・リーダー横山正・東京農工大助教授が開会の挨拶を行った。また、ワークショップ期間中に参加者は、VAEC・INST等を訪れ、IAEAプロジェクト下で設置されたコバルト60照射装置などを見学した。 参加国からは「土壌微生物活性の改善」を中心トピックスに、各国のバイオ肥料研究の進展状況や、実証試験の進捗を報告した。以下は各国の報告の概要。 中国世界人口の22%を世界耕作面積の3.22%、1.1億haで養わねばならず、しかも国土の27・3%が砂漠化中で、化学肥料に代わるバイオ肥料開拓が大いに期待されている。現在、バイオ肥料は5十万dが生産され、500万ha(5%)以上の穀物と野菜の耕作地に利用されているが、新しいバイオ肥料の開発余地が大いにある。 このバイオ肥料にはピートや鶏糞等が目的菌のキャリア(培地)に用いられており、長期保管による菌の減少が課題で、そのため、キャリアの放射線殺菌試験が行われ、25kGyのガンマ線照射により、過熱加圧殺菌処理と同程度の効果が出ることが確認された。 インドネシア大豆の圃場試験を高地で行ったところ、灌漑システムが悪く、16%程度の増収だったが、将来的には、79%の増収を見込んでいる。また、キャリアの照射滅菌も行っている。 韓国過剰な化学肥料の使用に替わる自然にやさしく持続可能なバイオ肥料の利用が求められており、そのためにはバイオ肥料の効果の安定性・信頼性が求められている。 品質管理を重要視しており、キャリアの放射線滅菌を考慮中。(続く) |