[原子力産業新聞] 2005年2月17日 第2271号 <1面>

[所感] 京都議定書が発効

西澤潤一・原産会議会長が「所感」

ロシアが昨年11月5日、地球温暖化防止のための京都議定書を批准したことから、16日午後、京都議定書が発効した。同議定書の第1約束期間は2008年〜2012年までの5年間で、1990年比で、日本は6%減、EUは8%減、先進国と市場経済移行国全体で5%減程度のCO2放出の削減を目指す。

しかし、世界のCO2放出量の4分の1を占める米国が不加盟、日本も削減目標達成のメドがつかないなど、問題を残した船出となった。また、高い経済成長に伴いエネルギー消費が急増している中国、インド等の開発途上国は削減義務を負っていない。

京都議定書の発効にあたって、日本原子力産業会議の西澤潤一会長は16日、「原子力発電は世界の二酸化炭素を削減するには不可欠なエネルギー源」と強調する以下の「所感」を発表した。

1997年に採択された京都議定書が漸く発効した。途上国の参加問題や、米国の議定書離脱など課題は山積しているが、地球規模の温室効果削減に向けて大きな前進である。我が国が国際社会で貢献すべき点は多い。

日本原子力産業会議は、国際原子力フォーラムを設立し国連気候変動枠組み条約締約国会議等の場において原子力の重要性を訴える等、積極的に地球温暖化問題に取り組んできた。原子力発電が世界の二酸化炭素を削減するには不可欠なエネルギー源であるからである。今や国際社会では約440基の原子力発電が毎年、23億トンの二酸化炭素排出を防いでおり、原子力発電の利用なしでは世界全体の排出量が1割増加することになる。我が国においても、53基の原子力発電が年間約1億8300万トンの二酸化炭素の排出を防いでいる。

京都議定書においてわが国は90年度比6%の温室効果ガス削減目標を課せられているが、現時点で既に同8%上回っている。期限までに目標を達成することは極めて困難だが、いずれにしてもこの目標達成には、原子力発電の活用を除いて考えることは出来ない。世界が持続的発展を果たしつつ地球温暖化を緩和するには原子力発電が不可欠であることは自明である。そのためにも、国際社会は原子力の開発・利用を促進できる政治的環境を整えていく必要がある。今後、途上国における需要増大に対応するには省エネ、再生可能エネルギーの利用のみならず、議定書に謳われたクリーン開発メカニズムの活用をはじめとして、原子力発電の開発に向けた一層の支援を実施しやすい体制を構築しなければならない。

当会議は引き続き、わが国における原子力発電の利用を積極的に推進していくのみならず、海外の諸団体と連携して原子力発電の重要性を強く訴え、国際世論形成に尽力していく考えである。

京都議定書が発効した今日、事故トラブルの発生を抑えて、安定し信頼できる運転を実現・維持しながら、わが国政府が温室効果ガスゼロ排出の原子力のさらなる活用を含め、国際社会の経済発展と環境保全の両立にむけて現実的な方策を提示するのみならず実行して、再び主導的役割を果たすことを期待する。


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