[原子力産業新聞] 2005年2月17日 第2271号 <3面>

[レポート] 放射線滅菌の実験も

先週号に引き続き、1月にハノイで開かれたアジア原子力協力フォーラム(FNCA)バイオ肥料ワークショップから、アジア各国のバイオ肥料の開発・利用の現状を紹介する。

マレーシア

根粒菌のほか、新しい技術として植物生育促進根圏細菌の研究を進めている。現在焦点をあてている根粒菌、菌根菌のほか、植物生育促進根圏細菌も共通のテーマにすることが、代表から提案された。

フィリピン

大学や農家等と広く協力し、研究を行っている。ファーマーズ・フィールドデーを設けるなど、農家への普及にも力を入れている。バイオ肥料は、3〜5年で実用化する見込み。N―15で窒素固定率の見積もり試験を行っている。バイオ肥料は、1パック100円、経済効果は1万7000円程度と見積もっているが、さらに効果が上がると期待している。

タイ

農業国であり、国土の41%は農耕地で、食料安全要求の増大から、政府の方針として、化学肥料から自然生物肥料への置き換えを進めている。タイの圃場実証試験では根粒菌、根粒菌と菌根菌、堆肥接種原が米、マメ科作物、野菜に試され、根粒菌が効果的と確認され、キャリアの放射線滅菌の実験がなされた。

ベトナム

3種類の菌体(窒素固定菌、りん溶解菌、根病原体拮抗菌)を含むバイオ肥料により、収量がトマト21%、ジャガイモ31%、ピーナッツ19%、綿12%、コーヒー16%と大幅に増えた。

日本

日本からは雑菌による土壌汚染防止のため、カナダ産放射線滅菌済みキャリア(ピート)が根粒菌バイオ肥料に用いられ、市販されていること等が紹介された。

各国からは効果的なバイオ肥料のためには、土着のバクテリアや土壌成分や化学肥料によるバイオ肥料有効菌の死滅対策が重要との報告がなされた。また、各国が実施した圃場実証では、バイオ肥料がある種の化学肥料を代替できるとの結果が得られた。

キャリアの放射線滅菌については、日本の原研鳴海氏より、適切な照射線量の講演があった。また、原産永崎より、FNCA各国のコバルト照射・電子線照射施設を紹介、施設の有効活用を提案、各国からは電子線照射の高い効果に関心が集中した。照射施設は、参加国でまだ広く利用されておらず、各種キャリアに対し、効果的な滅菌線量研究を深め、各国の密接な協力が必要だ。FNCAコーディネータが、各国の農業機関と放射線照射施設とを橋渡しするよう求められた。

農家へのバイオ肥料の普及については、政府と民間会社の適切な品質管理下での販売促進が重要と認識された。また、農家へのバイオ肥料普及のため、FNCAで2006年末にマニュアルを出版することが合意された。(原産アジア協力センター永崎隆雄)


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