[原子力産業新聞] 2005年2月17日 第2271号 <3面>

[原産] 03年度 原子力実態調査の概要

2月10日号既報の通り、日本原子力産業会議は4日、2003年度の原子力産業実態調査報告を取りまとめ発表した。それによると、建設費については減少傾向が続く一方、運転保守部門の技術者が増加傾向を見せるなど、わが国原子力産業の重心が、「建設」から「保守」に移りつつある現状などが浮き彫りになっている。今号では、その概要を紹介する。

今回の調査対象企業数(調査表送付先)は661社であり、このうち回答があった企業は450社であった。

調査回答企業450社のうち、平成15(2003)年度に原子力関係の売上、支出あるいは従事者を有する等、何らかの実績があった企業は349社(電気事業11社、鉱工業311社、商社27社)で、本調査報告書は、これら実績を有する企業からの調査表をもとに分類、集計したものである。

1.電気事業の原子力関係支出動向

・原子力関係支出、2年連続して減少

電気事業の2003年度の原子力関係支出高は前年度から13.8%減少し、1兆5551億円となり、過去13年間で見ても最低額となった。2年続けての減少で、減少幅は前回調査(13.5%減)とほぼ同じ。支出の中で最も大きな割合を占める費目は原子力発電所の「運転維持費」(57.4%)だが、2003年度は前年実績とほぼ同水準の8924億円となった。これに対し、「核燃料費」は対前年度比マイナス34.5%の大幅な減少(3500億円)。また、「建設費」も15.8%減少し2588億円となり、支出費目別ではこの2つの項目が減少の最大の原因となった。(表─1)

・修繕費が増加

「運転維持費」は電力10社合計で対前年度比マイナス0.4%となり、01年度の過去最高(1兆1303億円)との比較では約2割の減少。内訳で見ると、運転維持費全体の約4割を占める「修繕費」が、前回調査で対前年度比マイナス18.6%だったものが、今回調査では11.5%増加した。一方、廃棄物および特定放射性廃棄物の処分費用を含む「その他」経費(全体の4割強)が2年連続で減少した。

・減少傾向続く「建設費」

「建設費」については、建設計画の縮小にともない支出高は一貫して減少傾向を示している。特に建設費の4割強を占める「機械装置費」は、4年連続して減少し、03年度は1104億円(対前年度比マイナス34.4%)となった。「建屋・構築物費」も2年連続の減少(マイナス31.1%)となっているが、諸装置や無形固定資産などを一括した「その他」経費は逆にプラス14.8%と2年連続で増加したほか、建設利子や人件費を含めた「間接費」も前年度実績の2倍近い額(プラス77%)に増加した。

・「核燃料費」、対前年度比マイナス34.5%に

ウラン精鉱費、転換費、濃縮費、加工費、再処理費、貯蔵費、輸送費などが含まれる「核燃料費」は、96年以降、緩やかな曲線を描きながら増加していたものの、今回調査では、前年度比34.5%の減少となった。

・ 「試験研究開発費」も最低水準

(略)

2.鉱工業の売上動向

・原子力関係売上高、92年度実績から35%の減少

鉱工業全体の2003年度の原子力関係売上高は、91年度以降で初めて1兆5000億円を下回った前年度実績(1兆4980億円)からさらに3.3%減少し1兆4482億円となった。過去13年間で最高を記録した92年度実績の2兆2410億円と比べると約35%の減少。

・「燃料サイクル」部門の売上が2割減

部門別では、原子炉機器・関係設備や原子力材料、機器据付け分野をまとめた「原子炉機材」部門が対前年度比5%増の4588億円になったものの、「燃料サイクル」部門(核燃料物質や濃縮役務、再処理役務、廃棄物処理処分役務、核燃料輸送役務、および核燃料サイクル機器の分野を網羅)が前年度から19.9%減少して2749億円になったことが全体の売上高低下につながった。

  (略)

・一層の売上減少を予想

本調査では、鉱工業における今後の原子力関係売上高を、毎回調査表に添付して実施しているアンケート調査に基づいて予想している。それによると、鉱工業の原子力関係売上見込み高は1年後に2003年度実績のマイナス13.4%(1兆2549億円)、2年後にマイナス17.1%(1兆2003億円)、5年後にマイナス7.8%(1兆3355億円)になり、売上高がさらに減少すると予想していることが明らかになった。

3.鉱工業の支出動向

・支出高は「原子炉機材」中心に2年連続減少

支出高に目を向けると、03年度の総額は対前年度比11%減の1兆4132億円で2年連続の減少となった。98年度に1兆4227億円となって以来、01年度に1兆8166億円を記録したが、今回調査では過去13年間で最小となった。

(略)

・「原子炉機材」「燃料サイクル」ともに一層の支出減少を予想

総支出高の将来見込みは、1年後の04年度は03年度比6.2%減の1兆3255億円、2年後は同じく03年度比で15.9%減少して1兆1892億円。5年後は1兆2276億円になると予想されている。

(略)

・研究支出の減少傾向に歯止めかからず

原子力機関への出資金や海外技術導入費を除いた鉱工業全体の研究支出高は対前年度比マイナス1.8%の300億5300万円となった。過去13年間でみると、97年度に852億4400万円を記録したものの、98年度には502億2400万円(マイナス41.1%)に急落し、その後も減少傾向に歯止めがかからない状態が続いている。

(略)

 研究開発の活動状況指標である「研究投資率」は研究用・総支出高を売上高で除して計算しているが、03年度はほぼ前年度並みの2.2%だった。

(略)

・「燃料サイクル」部門の生産設備投資高が6割減に

2003年度の鉱工業の生産設備投資高は1271億円。全体の78.4%を占める「燃料サイクル」部門が対前年度比でマイナス59%(996億円)となったことが影響して、全体でも51.6%の大幅減少となった。

(略)

4.民間企業の原子力関係従事者数

・ピーク時から28%減少

2003年度に原子力関係の業務に携わった鉱工業および電気事業の従事者数(事務系を含む)は、前年度から2730人減少(マイナス5.3%)し4万8534人となった。本調査を開始して以来、最高を記録した1982年度(6万7468人)と比べると約28%の減少。また、同年度以降でみても初めて5万人を下回った。電気事業は前年度から0.4%増加し1万321人となったが、鉱工業は6.8%(2773人)減少し3万8213人となった。(表─2)

・さらに減少を予想

今後の見込みについては、電気事業の原子力関係従事者数がほぼ横ばいであるのに対して、鉱工業では従事者数がさらに減少するとみられている。

(略)

・運転保守部門の技術者が増加傾向

電気事業の原子力関係従事者のうち技術系従事者(研究者を含む)をみると、「運転・保守部門」の占める割合が大きいのが特徴。1999年度以降で見ても常に60%以上を占めていることに加えて、人数・割合とも上昇する傾向にあり、建設から保守にウエイトが移ってきている状況が伺える。

(略)

・鉱工業、「設計」「原子炉機器製造」部門の人員減少に歯止め

最近の傾向として、鉱工業の技術系従事者のうち、「設計」と「原子炉機器製造」の人員減少が顕著であったが、今後の予想をみると、そうした傾向にも歯止めがかかりそうな見通しとなってきた。

(略)

今後事業が本格化していくとみられる「再処理、廃棄物、処理処分部門」の従事者数は対前年度比3.9%増の1209人となった。99年度には434人で、技術系従事者全体の1.5%を占めるに過ぎなかったが、01年度には3倍の1306人に増加、シェアも4.7%に上昇した。

5.鉱工業のアンケート調査

(略)

6.商社の動向 

・取扱い総額は縮小するも電気事業向け核原料物質が大幅増

商社による原子力関係の取り扱い高は4169億円で対前年度比マイナス18.7%。年毎に増減が大きいという特徴はあるものの、80年代に記録していた1兆円台と比べると規模は確実に縮小している。03年度を見ると、国内取扱い高(2363億円)の占める割合が56.7%と最も高かったが、金額比では前年度実績から25.7%減となった。輸入取扱い高は1757億円で6.4%の減少。輸出高は48億円で前年度からは31.6%減った。

納入先は「電気事業」の占める割合が最も高く、国内取扱い高の90.8%を占めた。

(略)


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