[原子力産業新聞] 2005年2月24日 第2272号 <4面> |
[原研] 原研、シミュレーションに成功日本原子力研究所は、「金属のニッケル中に微量の硫黄元素が含まれると、ニッケルが割れやすくなる現象」の基本的メカニズムを、スーパーコンピュータ上でシミュレーションに成功したと発表した。 計算科学技術推進センターの山口正剛氏らによる成果で、原研では原子炉圧力容器内シュラウドのひび割れ現象の解明と、その防止策の進展に役立つものとしている。 大きさ数10ミクロン程度の結晶の粒(結晶粒)の集合体である金属材料において、結晶粒の中に含まれる微量の不純物元素が結晶粒界(結晶粒同士の境界)に集まり、金属材料が割れやすくなる。 今回原研では、その例の1つである微量の硫黄元素(不純物)を含むニッケルにおいて、ITBL並列計算機システムを用いた延べ約60万時間におよぶシミュレーションを実施。ニッケルの結晶粒界への硫黄元素の集まりやすさを調べると共に、実際の材料において強度を調べるために行われる引っ張り試験を模擬する計算を行った。 その結果、@結晶粒界において、ある濃度を超えて硫黄原子が集まると、それによって隣接した硫黄原子同士が反発し始めることAその反発力が結晶粒界に隙間を開け、ニッケルの引っ張り強度を大幅に低下させること――を発見。計算の妥当性については、引っ張り強度の低下度合いとそれをもたらす硫黄濃度について、計算と実験のデータがほぼ一致したことから「裏づけられた」としている。 |