[原子力産業新聞] 2005年3月24日 第2276号 <1面>

[原子力委員会] 2100年への原子力見通し示す

原子力委員会は16日、第21回新計画策定会議を開催、「エネルギー政策における原子力発電」について議論した。資源エネルギー庁は2030年以降も原子力発電比率3〜4割程度かそれ以上必要だが、原子力産業の技術・安全・人材などの維持が深刻な課題など説明。多くの委員がこの内容を妥当とするとともに、多様な意見が出された。

エネ庁は2100年の世界のエネルギー需要が現在の3倍に拡大、資源獲得競争が激化する一方で、大気中CO2濃度安定化のため排出量半減が必要などの予測を紹介。「原子力か新エネか」ではなく「原子力も新エネも」が基本とした上で、原子力を見直す欧米動向、原子力環境、事業者の対応、原子力産業の課題、今後の政策課題などを示した。

原子力環境では自由化対応の新たな原子力政策が必要とし、事業者の対応では高経年化対策や定期検査の柔軟化などにより既設炉の最大活用を進めるとともに、2050年頃からはFBR導入も考慮とした。

原子力産業の課題で、エネルギー政策上としても課題としたのは技術・安全・人材の維持。早ければ2030年頃に訪れる大規模建設時代までにこうした基盤の深刻な劣化を懸念。今後の政策課題では民間の長期投資戦略において原子力発電を確保する様々な環境整備が必要とした。

委員からの意見は、「技術の高度化がなければ現水準の維持も危機に陥る」(岡ア委員)、「新規立地に対する国の関与を現時点から整備する必要がある」(末永委員)、「官民協力による輸出環境の整備を」(庭野委員)、「放射性廃棄物もCO2も削減のため、省エネと再生可能エネルギーの積極導入を」(伴委員)、「電源選択は多くの中から合理的に選択する手法が必要」(吉岡委員)、「既設炉最大活用は安全重視が基本、立地あっての原子力との観点を一層強く」(河瀬委員)、「高経年化技術でも原子力産業が発展できるよう国は制度面の考慮を」(内山委員)、「長計に原子力を確保する環境整備を盛込むべきで、プルトニウム利用も必要不可欠」(藤委員)、「自由化議論の際、原子力問題は先送りされた。先送りした背景の変化の説明が必要」(佐々木委員)、「原子力に腰が引けたと感じていたエネ庁資料として評価。技術等は、日本原子力技術協会とともに国・メーカー・事業者一体で乗り切れる」(勝俣委員)。

「官民の役割分担が分散にならない注意が必要。地方自治体もルールに則った施策を」(田中委員)、「エネルギー基本法で自由化は安定供給と環境に対し下位。技術者確保から米国は日本の建設減少を好機と捉えている」(神田委員)、「30年後の対応を早期に検討すべき。ミスが多く現時点では検査の柔軟性は打出せない」(橋本委員)、「軽水炉のリプレース戦略の明確化が重要」(殿塚委員)、「新エネ導入見通しは厳しく、次世代軽水炉のロードマップが重要」(山名委員)、「電源選択は事業者の自主的判断。廃炉問題は安全基準ありきで温暖化問題と関係させるべきでない」(渡辺委員)、「自由化が原子力を漂流させる懸念がある」(山地委員)、「現長計策定時に比べ、CO2問題やエネルギー需給が切迫し、原子力の役割は重要」(住田委員)など。


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