[原子力産業新聞] 2005年3月31日 第2277号 <1面>

[青森県] MOX加工立地で「聴く会」

 青森県は26日、三村申吾知事が直接県民からMOX燃料加工施設の立地について意見を聴く「ご意見を聴く会」(=写真)を青森市内のホテルで開催した。県側選定者、一般公募者など31名が賛成、反対の立場からそれぞれ意見を述べたが、賛成意見が多数となった。

 三村知事は「様々な貴重な意見を拝聴した。情報収集や分析に努め総合判断する」とした。近く最終判断の見通し。

 「ご意見を聴く会」には県選定者として商工、農林水産、医療福祉、生活教育等の団体、各反対組織、学識経験者などの代表17名と一般公募者14名が意見を述べた。このうち賛成の立場は17名、反対の立場が八名、安全確保の検討を十分になど中間的な立場が六名。会場には約200人の一般市民も参加、意見に熱心に耳を傾けた。

 賛成の立場では、「エネルギーの安全保障や温暖化対策など国策上必要な施設であり、青森県もこの政策に協力すべき」、「一連の核燃料サイクル施設は地元経済や税収面に貢献する」などの視点からの意見が多く出された。このうち再処理工場に勤務する一般公募者は「エネルギー自給率4%の日本で原子力は基幹電源。職場では安全確認の合図がクセになり、品質保証意識が浸透してきており、この状況を県民に伝えたい」、同じく一般公募者の主婦は「次の世代のエネルギーを確保する上で施設は必要」とした。賛成意見でもほぼ全員が、安全最優先やオープンな情報公開、農業・漁業との共存への配慮などが必要と指摘した。

 一方、反対の立場では、「青森県は原子力から脱却し一次産業や観光での振興を目指すべき」、「プルトニウム利用や放射性廃棄物の最終処分が不明確」、「事業者の安全意識に疑問が残る」、「風評被害の懸念」などの視点からの意見が出された。このうち農業の一般公募者は「観光客等へのアンケートで80%は再処理工場で青森県産農産物のイメージが低下すると答えており、農産物販売に影響が出る」と懸念。原子力でなく下北の特徴を活かし風力発電などの誘致に注力すべきとの意見も出された。

 三村知事は「県は県民に安心が得られるよう慎重に検討してきたが、この会でも安心を求める声が圧倒的多数。国と事業者はこの県民の声に誠意を持ってどう取り組むか問われている」とした。

 MOX燃料加工施設は01年に日本原燃が09年度の操業開始を目指して県に立地協力を要請。県の安全性チェック検討会は今年1月に「安全性は十分確保できる」とする報告書を了承、先月には県議会議員全員協議会、市町村長協議会、原子力政策懇談会での検討も終えている。


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