[原子力産業新聞] 2005年3月31日 第2277号 <2面>

[原産] 国際WSを開催 燃料サイクル・FBR研究開発など各国が状況を報告

 日本原子力産業会議は24日、東京・千代田区のホテルで、国際ワークショップ「燃料サイクル研究開発と高速増殖炉開発」を開催した。

 会の冒頭、宅間正夫原産副会長は挨拶で、「急増する世界人口の趨勢のなかで、『経済・エネルギー・環境』の三つの「E」のトリレンマが引き起こされる。ウランの有効利用を目指す燃料サイクルと高速増殖炉の開発利用は自明の理」とし、ワークショップ開催の意義を強調。続いて特別講演として、中島一郎サイクル機構理事が、高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究、「もんじゅ」での研究開発、基盤的な研究開発の概要を報告し、今後の研究開発では、第四世代原子力システム(Gen―W)などの国際協力プロジェクトを積極的に活用することが必要とした。

 引き続き行われたセッション一「各国の燃料サイクル研究開発と高速増殖炉開発計画」では、5件の講演が行われた。

その中でC・ガングリー国際原子力機関(IAEA)核燃料サイクル・核物質課長(=写真)は、革新的原子炉・燃料サイクル国際プロジェクト(INPRO)の概要と今後の計画について報告。INPROは2001年に発足したIAEA主導の国際プロジェクトで、原子力発電の経済性の向上、固有の受動的安全性確保、核拡散抵抗性の強化、廃棄物管理と環境保護、パブリックアクセプタンス推進などを内容とし、@先進国のみならず途上国も対象に、04年12月時点で参加国は22か国で増加しつつあるA日本はオブザーバーとして参加している――ことを報告した。

 同氏はさらに、液体金属冷却高速炉とその燃料サイクルについても言及。先進国を中心に、様々な燃料加工や照射試験を含めて諮問会議や技術会議を開催するほか、IAEA技術報告書(TECDOC)を刊行するなどの活動を展開しているとした。

 引き続き、F・キャレ・フランス原子力庁(CEA)将来型原子力システム部長が、高速炉の研究開発とマイナーアクチニド(MA)のリサイクルによる環境負荷低減について報告を実施。フランスの高速炉研究開発については、既存のナトリウム冷却型高速炉の改良と、第四世代のガス冷却型高速炉(GFR)研究開発の二本柱で構成されており、その選択は2015年か20年頃行われ、欧州標準軽水炉(EPR)の後継として、40年頃に使用を開始するとの予測を明らかにした。

 一方燃料サイクルについては、廃棄物の形態の最適化、サイクルの完結、核拡散抵抗性の増強等が重要であり、新型燃料の照射試験では「もんじゅ」を利用した国際協力を計画中であることを明示。軽水炉のみならず高速炉でMAのリサイクルを実施することが、資源の有効利用と放射性廃棄物量の削減等に貢献するとした。

 さらに、中国原子能科学研究院中国高速炉研究センターの徐主任研究員は、中国の高速炉燃料サイクル開発の現状と展望について説明。高速炉の役割は、ウラン資源の有効利用とPWRで発生する低レベル廃棄物放射性廃棄物(MAなど)の変換であるとし、2020年、30年のPWR発電所出力を、それぞれ三千二百万kW、五千万kWと予測するとともに、金属燃料で完結型燃料サイクルの大規模FBR(商用炉)の使用開始を30年に計画中と報告した。

 同氏はまた、高速炉燃料サイクルについては、高速増殖炉を使った完結型Pu―U燃料サイクル、高速燃焼炉を使ったMA−U燃料サイクルなど四案を検討中であり、将来の研究開発では、IAEAほかとの国際協力に期待するとした。


Copyright (C) 2005 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.