[原子力産業新聞] 2005年3月31日 第2277号 <3面>

[IAEA] パリで閣僚級会合「21世紀のための原子力発電」を開催

 国際原子力機関(IAEA)は経済協力開発機構(OECD)と協力し、21、22日の両日、パリで「21世紀のための原子力発電」と題する閣僚級会合を開催、74か国から閣僚および政府高官が参加、10国際機関から代表者が参加した。会議の終了時にまとめられた声明文は「原子力発電はエネルギー需要を満たし、21世紀における世界の発展を支える上で、多大な貢献ができる」としている。

 主催者を代表し、エルバラダイIAEA事務局長は「原子力発電―未来への備え」と題して講演。まず、ナイジェリアなどサブサハラでは、西欧諸国に比べて、一人あたりの電力消費量が百分の一以下であるなどの「世界的なエネルギー不均衡」を指摘。世界で約16億人が電力など近代的なエネルギーを利用できない状況にあるとした。しかし長期的に途上国での電力利用者は増えることから、「エネルギー需要の持続可能な成長」が必要と強調、エネルギー需要は、2020年までに現在の60%増、今世紀半ばまでには倍増するとの見通しを示した。

 増加するエネルギー需要を満たすため「原子力発電への期待が明らかに高まりつつある」とし、IAEAとOECDが、2020年の原子力発電見通しを、以前の見通しより1億2700百万kW高い4億2700万kWに上げたことを紹介。京都議定書発効による温暖化ガス排出規制の影響もあり、二酸化炭素を排出しない原子力発電の役割が高まることを強調した。

 世界原子力協会(WNA)のJ・リッチ事務局長は、世界銀行など国連の開発機関等が、古い反原子力の環境主義に取り込まれていると批判。国連機関が「原子力発電が中心的な役割を果たすクリーン・エネルギー・ビジョン」を追求するよう、加盟各国が求めていかなければならないと述べた。

 日本からは、経済産業省の平田耕一・大臣政務官や近藤駿介・原子力委員長などが参加。平田政務官は、増大するエネルギー重要への対応と温暖化防止から、原子力の役割が今後ますます増大するとし、原子力を中心とした日本のエネルギー戦略を説明した。

 近藤委員長は「原子力産業にとっての推進要因―戦略と選択」と題したラウンドテーブルで、「原子力の持続的発展を進める要因と行動計画のあり方」と題し基調講演。原子力の持続的発展のためには、@既存施設の効果的活用に向けた取組みという短期的活動A既存設計を改良し競争力を維持する中期的活動B未来社会での生き残りに向けた革新的原子力技術開発を目指す長期活動――という、三つの時間的枠組みの行動計画を並行して進める必要があると指摘。さらには、技術が社会に受け入れられるためには、人々の多様なニーズに応える「デマンド・プル」が重要とし、これらの活動の透明性を確保し、社会からのフィードバックを受け入れつつ進める必要性を強調した。

 会議でまとめられた声明文は、原子力発電が、@二酸化炭素を排出しないことA実証された技術で競争力を持つ電力を供給できることBエネルギー・セキュリティと供給安定性に貢献することC飲料水や水素の製造にも利用できること――などを指摘。原子力発電は先進国と途上国で「大きな貢献」ができるとした。

 その反面、原子力発電が成功するためには、@核不拡散A原子力安全BセキュリティC使用済み燃料と放射性廃棄物の安全管理D革新的原子力システムの開発――などの条件が必要とも指摘した。


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