[原子力産業新聞] 2005年3月31日 第2277号 <4面>

[資源エネ庁] 2100年への原子力シナリオを策定会議に提示

 本紙24日号で既報の通り、経済産業省・資源エネルギー庁は、16日に開かれた原子力委員会の新計画策定会議の場で、今後2100年までの原子力の見通しを示し、2030年以降、2100年頃まで原子力発電を5800万kW程度、シェア3〜4割に保つとのシナリオを描いた。原子力発電の地球温暖化防止への役割について、そのハイライトを紹介する。

途上国のCO2放出6倍に

地球温暖化防止の視点

エネルギー消費の増大に伴い、世界のCO2排出量も大幅に増加し、2100年には現在の3倍以上になる可能性がある。

 特に発展途上国の伸びは著しく、2020年〜2030年頃には先進国を抜き、2100年には現在の約六倍、先進国の約3倍となるなど、世界の排出量の増加のほとんどを占めると見込まれる。

 エネルギー消費の増加に伴い、世界のCO2等の排出量も、今後急激に増大。特に発展途上国では、2100年には現在の六倍以上になる可能性もある。

 一方、現在増加傾向にある大気中のCO2濃度を安定化させるためには、現在の半分以下にまでCO2排出を大幅削減する必要があるとされている。

 したがって、地球温暖化対策は長期的な視点で取り組んでいくことが必要。

 CO2の削減には天然ガスも有効であるが、化石燃料であることに変わりはない。天然ガスは、石油や石炭よりはCO2排出は少ない(3割強〜5割弱の削減)ものの、ライフサイクルでは原子力に比べれば20倍以上を排出。

 我が国において、仮に現在(2002年時点)の原子力を石油、石炭に置き換えたとすれば、同年比でエネルギー起源CO2排出量は2割弱増加。原子力を天然ガスに置き換えた場合でも、1割弱増加。

原子力5800万kWを維持

 我が国は、今後とも、世界有数の省エネ技術に更に磨きをかけ、最先端の省エネ社会の実現によって、エネルギー需要を抑えていくことが必要。

 そうした努力を行った上で、存在するエネルギー需要に対しては、これに見合う供給を、エネルギー安全保障や地球温暖化防止の視点を踏まえつつ、適切に確保していかなければならない。

「原子力も新エネルギーも」

 このためには、原子力か新エネルギーか、という二者択一ではなく、原子力も新エネルギーも活用していくことが不可欠。原子力については、2030年以後も現在の水準程度か、それ以上の役割が求められる。

 この水準(一次エネルギー供給の17%程度)は、2100年の世界を展望した主要なエネルギー見通しにおける世界全体の原子力比率(一次エネルギー供給の10%弱〜30%弱)に照らしても、合理的な水準。

今後の方向

 省エネルギーの進展・新エネルギーの導入を大胆に見込んだ場合の2100年までのエネルギー需給見通し 【仮定】

 @省エネルギー2100年のGDP当たり最終エネルギー消費は、現在の約三分の一。

 A新エネルギー⇒太陽光、風力など新エネルギーの導入は、2100年には現在の約180倍に拡大。

 原子力を5800万kW(総合資源エネルギー調査会における2030年見通し、レファレンスケース)としても、2100年の電力に占める原子力の割合は現状程度の約3割【参考1】。

 この場合、原子力が一次エネルギーに占める割合は、現在の12%程度から17%程度に上昇。世界全体における原子力比率が8%〜29%程度と見込まれる中、この比率は合理的な水準【参考1】。

 大気中のCO2濃度の安定化には、その排出を世界で現在の半分以下にまで大幅削減することが必要。原子力がこの水準でも、2100年時点において、我が国のCO2排出は現在の半分近くまで削減できるかどうか【参考2】。

 原子力を入れなければ、CO2排出はさらに約3割も増加【参考2】。


Copyright (C) 2005 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.