[原子力産業新聞] 2005年4月28日 第2281号 <6面> |
[第38回原産年次大会] セッション3このセッションでは、再処理事業を2年後に控えたこの時点において、燃料サイクル関連事業者が当面の課題を整理した上で、燃料サイクル確立をより確かなものにするための実行シナリオを描く。また独自路線を歩むロシアからは現状と将来計画を紹介。議長は、鳥井弘之・東京工業大学原子炉工学研究所教授。講演者は、平田良夫・日本原燃副社長、殿塚 猷一・核燃料サイクル開発機構理事長、A・ビチコフ・ロシア原子炉科学研究所科学技術部長の3名。 ▽平田氏「原子燃料サイクル事業の結実に向けて」日本原燃はウラン濃縮、低レベル放射性廃棄物埋設、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理、再処理、MOX燃料加工などの事業を進めている。MOX燃料加工工場も、地元との立地基本協定を締結し、2007年着工、2012年操業を目指す。 再処理工場の中央制御室は100万kW級原子力発電所の5、6倍の広さがあり、運転は1班55人、5班3交代の要員で実施している。ウラン試験は昨年12月21日から開始し、本年12月までの予定で、三月までに発見された不具合は約90件。ウラン試験に続き2007年五月までアクティブ試験を行う。 当社は2004年初めに品質保証システムを再構築し、今下期から本格的に「社長の顔の見える」改善活動に入っている。今後は運転・保守技術の習熟、改良、蓄積に邁進し、安全第一に安定運転を目指すとともに、六ヶ所圏に運営・保守技術者の匠集団を形成する。また、2010年頃から検討する第二再処理工場もどのような方式であっても本再処理工場の経験は生きると確信している。 ▽殿塚氏「FBRサイクルの可能性と『もんじゅ』」「もんじゅ」は今年2月に地元自治体の改造工事事前了解が得られ、現在、改造工事のための準備工事を進めている。改造工事は約17か月、工事確認試験に約1年間が必要だが、早期の運転再開を目指している。 FBRサイクルにより資源利用効率の向上、環境負荷低減などが可能であり、我が国にとってその意義は極めて大きい。「もんじゅ」が目指す研究開発はFBR発電プラントとしての信頼性実証、ナトリウム取扱技術の確立などだが、国際協力の拠点として整備し、国内外に開かれた体制のもとで研究開発を進める。日仏米によるMA含有燃料の照射試験、GEN−Wでの利用などである。 また、FBRサイクル実用化戦略調査研究のフェーズIIは今年度で終了するが、2015年頃には競争力のあるFBRシステムの技術体系を提示する。将来のFBR原子炉は電気出力150万kW、建屋容積13万m3を想定しており、これは「もんじゅ」の電気出力の5倍強、建屋容積で約六分の一となる。 ▽ビチコフ氏「ロシアのFBR燃料リサイクルシステム研究開発の状況」ロシアは次世代高速炉としてナトリウム冷却の「BN−800」や鉛冷却の「BREST−300」の建設計画を進めている。これらの燃料には解体核で回収したプルトニウムや軽水炉の使用済燃料を再処理し、高温化学処理により生成するMOX顆粒を振動充填法にて製造した燃料ピン(バイパック燃料)を使うべく、開発を進めている。 バイパック燃料は、ペレット燃料に比べ、製造ラインが単純、遠隔操作が容易、組成・形状の適応性、被覆管への熱力学影響の軽減、などの優位性がある。BN−600ではすでに12体を照射しており、3体は照射後試験中である。現在、RIARにある既存の燃料製造施設を年間50体のMOX燃料集合体製造能力の施設にアップグレードするための改造を実施中。 今後は解体核プルトニウム処分にむけて、BN−600における21体の照射、BN−800を視野に入れたMOX燃料集合体製造とクローズド・サイクル構想の確立といった重要な課題がある。 「市民の質問と意見交換の会」「市民の質問と意見交換の会」はこの大会を通して発表された講演や討論の内容について、市民からの質問や疑問に答えることにより知識を深めて頂くとともに、「暮らしと放射線」や「女性から見る原子力」を取り上げ、積極的に意見や提案を発表して頂く場として設けられた。司会は安藤奈帆子・ポートクイーン新潟、コーディネータは土屋佳子・フリーアナウンサー。 まず、消費生活アドバイザーの碧海酉癸氏がウイメンズ・エナジー・ネットワーク(WEN)による「くらしと放射線」のアンケート結果から、女性の放射線に関する意識を紹介。 またビスコンティ・リサーチ社のA・ビスコンティ社長からは、米国における最近の原子力エネルギーに関する世論調査が紹介された。 この後、一般参加者とパネリストなどの間で、プルサーマルをどのように考えるべきか、ウラン燃料の確認埋蔵量は様々な数値が伝えられるがどう考えるべきか、原子力発電所と地域振興を如何に結びつけるか、原子力の安心を如何に得るか、など様々な意見交換が行われた。 |