[原子力産業新聞] 2005年5月12日 第2282号 <1面>

[原子力安全委員会] 04年版「安全白書」を公表

 原子力安全委員会は10日、2004年版「原子力安全白書」を閣議に報告、公表した。今回の白書では、美浜発電所3号機二次系配管破損事故について、「二度起こしたことを三度にしてはならない」と強調。現在のわが国における原子力安全確保の必要性を示すキーワードとして「品質管理システム」を掲げ、また、高経年化施設の問題がこの1年間で重要になってきたと指摘している。

 白書は序文で、2004年のわが国の原子力安全を巡る状況を振り返り、8月の美浜発電所3号機事故について、事業者が自主的に定めた管理指針に基づき適切に管理することにより防止するとされていたものが、実際には行うべき管理の点検リストから当該破損箇所が漏れ、長年にわたり見過ごされていたために起きたとして、事業者の品質管理システムの欠陥が露呈したものと指摘している。

 その上で、この事故によって得られた教訓として、(1)人的要因による事故発生の防止等、事業者の安全確保活動の品質保証強化(2)一次系だけでなく二次系を含めた施設の安全確保や一般労働安全のあり方等従業者の安全確保(3)事業者の安全文化の醸成等――を重要な点として掲げている。

 原子力施設の安全確保については、「油断を排し、常に安全の向上を目指し品質管理システムを適切に機能させることが重要」と強調、国による規制とともに、事業者を始め保安活動に係わるすべての人や組織がたゆまぬ努力を行うことを訴えている。

 また、今回の白書では第1編に、「原子力施設の廃止措置に係わる安全規制とクリアランス制度」を特集。わが国の原子力利用が既に40年を経過し、幾つかの原子力施設ではその役割を終える時期が近づきつつあることから、廃止措置に対する安全規制が今後重要になってくるとしている。廃止措置により大量の放射性廃棄物が発生、再利用・再生のため、「廃棄物のうち放射性物質として扱う必要のないもの」を判別するクリアランス制度の確立が望まれているとする。

 これらを背景に、同編では、廃止措置およびクリアランスの現状、安全委員会における検討などについて説明した上で、廃止措置規制の充実等を図るため、原子炉等規制法の一部改正法案を国会に提出すると述べている。

 白書はこのほか、第2編「平成16年の動き」、第3編「原子力安全確保活動のための諸活動」、資料編から構成されている。


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