[原子力産業新聞] 2005年6月2日 第2285号 <1面>

[最高裁] 「もんじゅ」安全審査は合法

 最高裁判所第一小法廷(泉コ治裁判長)は5月30日、「もんじゅ」の設置許可処分を巡る行政訴訟の上告審で、名古屋高裁金沢支部判決を破棄し被上告人らの控訴を棄却する、との判決を言い渡した。設置許可の安全審査で看過し難い過誤・欠落は認めらず、二次冷却材漏えい事故などに対する安全対策も不合理とはいえないとした。20年にわたり争われた「もんじゅ訴訟」は国側の勝訴が確定。核燃料サイクル開発機構の殿塚理事長は「今後もより一層気持ちを引き締めて着実に工事を進め、運転再開に向け全力を尽くす」とした。(2面に判決理由要旨)

 午後3時に開廷した小法廷で泉裁判長は、「原判決を破棄する。被上告人らの控訴を棄却する。控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする」との主文を読み上げ閉廷した。判決は裁判長を始めとする5名の裁判官の全員一致。

 判決理由では、まず設置許可段階での審査範囲などについて、国の専門技術的裁量を認め、原子力安全委員会及び原子炉安全専門審査会による安全審査の調査審議や判断過程に看過し難い過誤や欠落があったといえないとした。

 その上で、名古屋高裁判決で重大な違法があるとした、@二次冷却事故に対する鋼製床ライナ設置に対する安全審査A蒸気発生器伝熱管破損事故に係る安全評価B一次冷却材流量減少時反応度抑制機能喪失事象(炉心崩壊事故)の安全審査―などをそれぞれ評価。

 床ライナの具体的施工方法については、設計及び工事方法の認可(設工認)以降の段階における審査対象とする判断に不合理な点はないとした。蒸気発生器も高温ラプチャ型破損の抑止が期待できる設計となっており、現在の技術水準に照らしても解析条件が不適当とは言い難く、審査・評価に不合理な点はないと指摘。炉心崩壊事故に関しても安全審査で遷移過程の事象推移の評価を欠いたとするのは相当でないとした。

 地元住民らが国を相手取り設置許可の無効を求める行政訴訟を起こして20年。原告適格を含め最高裁判決が2回出されるという異例の裁判はようやく確定した。判決後、会見した原告団は極端な行政追随の判決としたが、今後「もんじゅ」とどう向き合うか、近くそれぞれの立場の人が一堂に会し、協議したいとの意見も出された。

最高裁判決で関係者が談話

 最高裁判決への関係者の談話の概要は次のとおり。

中川昭一・経済産業相 これまでの国の主張を認めていただいた妥当な判決。今後とも厳正な安全規制を行うことにより、地元の方々をはじめ国民の皆様の信頼を得られるよう努める。

中山成彬・文部科学相 高速増殖炉サイクル技術は、我が国の長期的なエネルギーの安定供給を確保する観点から極めて重要な技術。「もんじゅ」はその研究開発の中核となる施設、安全確保を最優先に進める。

松浦祥次郎・原子力安全委員長 安全審査は、現在の知見と照らし合わせても妥当と認識している。原子力の利用は安全の確保が大前提。引き続き安全確保に厳しく努める。

勝俣恒久・電事連会長 安全の確保と適法な手続きを前提に早期に起動し、所期の目的を達成することが重要。地元のご理解を得ながら安全を最優先に、改造工事等の諸作業が着実に進められ、早期に運転再開が実現することを期待する。

西澤潤一・原産会議会長 貴重な工学的研究開発資源である「もんじゅ」を最大限に活用、情報公開と理解活動を進め、立地地域住民をはじめとする国民の信頼を揺るぎないものとしていくことが肝要である。


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