[原子力産業新聞] 2005年6月2日 第2285号 <3面>

[米上院エネ委] 包括エネ法案を可決

 米議会の上院エネルギー・天然資源委員会(P・ドメニチ委員長=共和党)は5月26日、懸案となっていた包括エネルギー法案を、21対1の圧倒的多数で可決、上院本会議に送付した。同法案は革新的原子力技術の利用奨励などの原子力関係条項も含んでいる。

 同法案は、共和党・民主党両党が成立に向けて協力しており、内容は、@エネルギー効率改善A再生可能エネルギーB石炭C電力D原子力E自動車F水素G研究開発H革新的技術へのインセンティブI石油とガスJ人員訓練K米エネルギー省(DOE)マネージメント――の各項目から成る。

 原子力については、@原子力発電が将来も国の主要なエネルギー源であり続けるための計画を策定Aプライス・アンダーソン法を2016まで延長B医療用RI製造のため少数先進国への高濃縮ウラン輸出CDOEにクラスC以上の低レベル廃棄物処分場提案の義務付けDアイダホ国立研究所に発電と水素製造用の新規研究炉の建設――など。

 さらに、「研究開発」の項目では、大学での原子力工学教育訓練へのDOEによる支援、使用済み燃料の毒性と量を減らすための技術開発、自然災害や攻撃から原子力施設の安全とセキュリティを改善する研究計画の立案、産業用大規模放射線源の利用見直し――などを挙げている。

 また、革新的技術採用へのインセンティブとして、汚染物質や地球温暖化物質を放出しない改良技術について、そのコストの80%を上限として政府が補償する条項を盛り込む。

 さらにDOEの原子力事業管理の改善のため、原子力担当次官補職の創設を求めている。

 包括エネルギー法案は、ブッシュ大統領が2001年5月に発表した「国家エネルギー戦略」を実現するための法案であり、今年4月21日には、下院本会議が可決。しかし今回、上院委員会を通過した法案とは若干、内容が異なる条項もあり、上院本会議が可決しても、両院協議会による法案の一本化が必要だ。

 最近の原油価格の高騰や北米での大停電等を受け、ブッシュ政権は包括的エネルギー法の必要性を今までになく強調、7月末までの成立を目指す。

 ドメニチ委員長は、「米国のエネルギー状況を一変させる可能性のある法案を、超党派によって作成することができた」と強調。上院の法案が下院のものと異なることを認めながらも、下院議長と協力、一本化に努力すると述べた。


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