[原子力産業新聞] 2005年6月2日 第2285号 <3面>

[米DOE] 規制遅延に「保険」新規原子力発電所 長官が提唱

 米エネルギー省(DOE)のボドマン長官は、米原子力エネルギー協会(NEI)総会で、新規原子力発電所建設のためには、建設終了後に行われるヒアリングなどの、許認可プロセスの一層の合理化が必要だと述べ、規制面の遅延があった場合には、政府が利息、運転保守費、建設費の半分を賄う「リスク保険」を提案した。

 総額は、原子力発電所1基あたり5億ドルまでカバーし、電力会社は保険料としてこの約10%を支払う。ただし、政府は新規発電所の建設を奨励するために、2008年12月31日までに新規発電所の発注を行う会社については、保険料徴収を見合わせる。他にも早期サイト許可、一括許認可コスト、投資奨励などの支援策を検討している。

 同長官は一方で、「インセンティブを追い求めていると、原子力発電は政府からの特別の援助がないと自立できないとの、誤ったメッセージを国民に送りかねない」と警告。世界中のエネルギー需要の伸びや、化石燃料以外のエネルギー源の必要性を考慮すると、安全かつクリーンで、適正価格の原子力の見通しは明るいと述べた。

 DOEは、今後25年間で世界的なエネルギー需要が著しく伸びると予想、石油需要は、現在の1日あたり8200万バレルから2030年には1日あたり1億2100万バレルに上昇し、全世界の電力需要は2025年までにおよそ75%増加するとしている。

 「需要が増加し続けている中、有限な化石燃料への依存度を減らし、環境に優しい水素燃料電池や風力、太陽光などの、新エネルギー源の開発が急務であるが、今現在、化石燃料に依存せず、汚染も温室効果ガスも排出せず、確実に大量の電力を生産できる技術がすでにある。その技術こそ原子力だ」とボドマン長官は述べた。政府と産業界が協力し、原子力について国民の理解を得、原子力は健全な投資であることを金融業界に伝え、政治指導者が自信を持って原子力産業界を支援できるようにする必要があると強調した。


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