[原子力産業新聞] 2005年6月9日 第2286号 <3面>

[英THORP] 漏洩開始は昨年8月か

 英国のセラフィールドにある酸化物燃料再処理施設THORPで、フィード清澄セル内に使用済み燃料を溶解した硝酸83立方メートルが漏洩していることが4月19日に発見された(本紙5月26日号3面参照)。この事故について、運転者の英国原子力グループ(BNG)は5月27日、その後の調査から得られたより詳細な状況を発表。今回破断した配管からの漏洩は、2004年8月頃から始まった可能性があると述べた。

 溶液のセル内への流出は、4月19日にセル内にCCTVカメラを入れ、発見されたもの。BNGは、セル内に貯まった溶液の放射能総量を約10万テラベクレル(2700kCi)と予想しているが、環境中への放射能放出はなく、施設は安定した停止状態にある。

 破断した配管は、2基ある計量タンクの1つにつながっていたもので、ステンレス鋼で裏打ちされた分厚いコンクリート製のセル内に配置。同セルは配管漏洩のさい、液体を閉じこめるもので、セルの床からタンクに液体を回収するポンプも備える。

 配管の破損原因は、計量タンクを配管からつり下げるように機構を改造したことにより、予想以上に大きな応力が配管に加わった金属疲労。THORPやセラフィールド施設では、同様の構造の部分はないという。漏洩した液体をタンクへ戻す作業はさらに四週間かかる見込み。

 漏洩は2004年8月には始まったとの痕跡があり、今年1月中旬にはパイプの破断により大量の溶液が漏れだしたと考えられる。しかし、1月から4月にかけて、同セルで漏洩を検出するサンプリングやレベル測定が行われなかったため、破損の発見が遅れ、漏洩量が増大した。

 調査を受けBNGは、@セラフィールド施設全体で金属疲労に対処するため詳細な工学的検討を行うAセル内機器等、プラント異常を示す系統の保守、試験の改善と信頼性向上を行うB今回の教訓を生かすため、プラント全体の運転慣行を見直す――の3点からなる改善勧告を行った。

 英規制当局である原子力施設検査局(NII)は、THORPに3名の検査官を送り、機器の検査頻度や配管漏洩の期間、違反の有無など、5月16日から独自の調査を行っている。

 4月1日にセラフィールド施設を英原子燃料会社(BNFL)から引き継いだ英原子力デコミショニング機構(NDA)は、BNGからの報告を受け、2日、BNGの結論と勧告を検討し、またNIIの調査結果を検討するためには「時間が必要」と発表、今後数週間、安全、技術、経済面から検討していくことを明らかにした。今後のTHORPの運転についても、「決定していない」とし、最終的な結論は英国政府が下すとした。THORPは現在、2010年までの再処理契約を持っている。


Copyright (C) 2005 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.