[政府] 04年度版 エネルギー白書の要旨
6月2日号一面既報のとおり、政府は5月27日、2004年度のエネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)を閣議決定した。今号では、04年度の重要事項、第1部「エネルギーを巡る課題と対応」、第2部「エネルギー動向」、第3部「04年度においてエネルギーの需給に関して講じた施策の概要」で構成された、同白書の要旨を紹介する。
平成16年度の重要事項(トピックス)
○エネルギー価格の高騰
- 中国等をはじめとする世界の石油需要の増加、OPECの余剰生産能力の低下、供給面のリスク、投機などの要因を背景に、原油価格は大幅に上昇。これに伴い、国内石油製品の価格も上昇。
- LPG、天然ガス、石炭、ウランなど各種一次エネルギー輸入価格も世界需要の長期的拡大等を反映し上昇。
○2030年のエネルギー需給展望
- 国内外の情勢変化を踏まえ、より長期的かつ定量的な見通しを示すため、「2030年のエネルギー需給展望」が2005年3月に総合資源エネルギー調査会から答申。
- 今後、エネルギー需要は自然体で2020年代初頭には減少に転じ、省エネポテンシャルが最大限に発揮されれば更に5000万kl程度減少し、CO2排出量は1990年度の水準を大幅に下回る可能性があると見通した。
- 中長期的なエネルギー戦略の在り方として、以下の点を指摘。
- @ アジアのエネルギー需要増加をにらんだ国際エネルギー戦略の確立
- A 省エネルギー・環境対策の推進
- B 原子力の推進、天然ガス利用の拡大、水素社会への取組等によるエネルギー供給の多様化
- C 大規模集中型と分散型の適切な組合せによるエネルギー供給システムの最適化
○京都議定書の発効
- ロシアの京都議定書批准により、京都議定書が、2005年2月に発効。
- 温室効果ガスの六%削減という我が国の京都議定書の約束達成へ向け、これまで、地球温暖化対策推進大綱の評価・見直し作業を各省連携して行ってきたところ。京都議定書の発効を受けて、大綱の評価・見直し作業は地球温暖化対策推進法に基づく「京都議定書目標達成計画」の策定作業へ移行。
- 2005年3月29日の地球温暖化対策推進本部において以下を基本的考え方とする京都議定書目標達成計画をとりまとめ、4月28日に閣議決定。
- (1)環境と経済の両立
- (2)技術革新の促進
- (3)すべての主体の参加・連携の促進とそのための透明性の確保、情報の共有
- (4)多様な政策手段の活用
- (5)評価・見直しプロセス(PDCA)の重視
- (6)地球温暖化対策の国際的連携の確保
○省エネルギー対策の抜本的強化
- 2004年6月総合資源エネルギー調査会・第6回省エネルギー部会…産業・運輸・民生の各部門における今後の省エネルギー対策の在り方についてとりまとめた。
- 2004年11月第7回省エネルギー部会…省エネルギー法の抜本改正等について議論を行い、省エネルギー対策強化のため具体的内容をとりまとめた。
- これらを踏まえ、各分野におけるエネルギー使用の合理化を一層進めるため、エネルギー消費量の伸びの著しい運輸分野における対策を導入するとともに、工場・事業場及び住宅・建築物分野における対策を強化する等の措置を講ずるため、以下の内容の「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」の一部を改正する法律案を国会に提出。
- (1)工場・事業場に対する規制区分の一本化等
- (2)運輸分野における省エネルギー対策の導入
- (3)住宅・建築物分野の省エネルギー対策の強化
- (4)消費者による省エネルギーの取組を促す規定の整備
○核燃料サイクルの推進等
- エネルギー基本計画において、「我が国としては核燃料サイクル政策を推進する
ことを国の基本的な考え方」としているところ。また、原子力委員会においては2004年6月に設置された新計画策定会議において核燃料サイクル政策について全て公開の下、集中的に審議。同年11月に、「使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用することを基本方針とする」中間取りまとめを行った。
- 核燃料サイクル政策の根幹をなす再処理等の事業は、極めて長い期間を要すること等の特徴を有しており、これを適正に実施していくためには、必要な資金を、安全かつ確実に、また、透明性が担保された形で予め確保することが必要。このため、2005年2月に関連法案を国会に提出するとともに、関連税制の改組を行った。
- 2004年12月に日本原燃釜Zヶ所再処理工場においてウラン試験が開始され、2005年2月には、高速増殖炉「もんじゅ」の改造工事についての地元の了解が得られた。
- なお、2004年11月には、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構を廃止した上で統合し、「独立行政法人 日本原子力研究開発機構」を設立するための法律が成立(新法人は、2005年10月に設立される予定)。
○東シナ海資源開発問題
1. 中国側の状況
○ 春暁油・ガス田等の概要(2003年8月に、春暁鉱区を含む五鉱区について探鉱開発契約締結)
@ プロジェクト参加者
中国海洋石油公司(CNOOC)、中国石油化工集団公司(Sinopec)、ロイヤルダッチシェル及ぶユノカル(シェル及びユノカルは2004年9月29日に契約を継続しない旨発表)
A 操業予定等
春暁鉱区は、2005年8月末から9月に操業(ガス生産)開始予定との報道あり。2007年〜2008年に、年産25億立方メートルが目標。
※一・春暁油・ガス田等については、その一部が日本の排他的経済水域にはみ出している可能性があり、中国側に情報提供及び開発作業の中止を求めてきているところ。
※二・その他にも中国が我が国排他的経済水域内で鉱区設定している可能性があり、中国側に事実確認と事実である場合の当該鉱区の削除を要請。
2. 日本の対応
○ 物理探査の実施
- 東シナ海の日中中間線日本側において、石油天然ガス・金属鉱物資源機構に
委託して物理探査(主に三次元)を実施中。
- データ収集作業は、2004年7月に開始。本年2月及び4月に中間的結果を得て、現時点で中国が鉱区を設定している春暁油ガス田、断橋ガス田について
構造が中間線日本側に連続していること、天外天構造について中間線日本側から中国側に向け地質構造が高まっていることが確認されている。その結果を踏まえ、改めて情報提供及び開発作業の中止を要求。
- ○ 日中実務者協議の開催(2004年10月)。
- ○ 試掘権設定手続きの開始(2005年4月)。
○関西電力美浜発電所3号機二次系配管破損事故
- 2004年8月9日、関西電力株浜発電所3号機において、二次系配管が破損し、二次冷却水が流出。この事故により、11名の死傷者を出すという重大な結果となった。
- 事故発生後、経済産業省は、職員の派遣、現地対策本部の設置を行うとともに、事故の翌日には、経済産業大臣が美浜発電所を訪れ、現地調査及び現地の関
係者との意見交換を行った。さらに、事故の原因究明と再発防止を図るため、総合資源エネルギー調査会の下に事故調査委員会を設置し、徹底的な審議を行っ
た(2004年9月中間とりまとめ、2005年3月最終報告)。
- 事故の教訓を踏まえ、国においては以下のような対応を実施。
- (1)保安検査において、事業者による管理実施方針の策定及び実施状況を調査し、必要に応じて改善指導を実施。
- (2)電気事業法施行規則を改正し、蒸気タービンに係る検査対象・検査方法を明確化(2004年12月)。
- (3)従来事業者に委ねてきた配管肉厚管理について、検査対象箇所の選定、余寿命に応じて講ずべき措置等、具体的方法を規定した通達を発出(2005年2月)。
- (4)当該事故を契機とした社会的関心の高まりを踏まえ、高経年化対策への取組を一層充実。 等
○自然災害への対応
- 平成16年度は、新潟県中越地震をはじめ、台風や豪雨により各地で大きな災害が発生し、エネルギーの供給にも影響を及ぼした。
- 新潟県中越地震の際、経済産業省は、地域の事業者に対し、復旧に全力を尽くすよう指示するとともに、関係事業者に協力を要請。現地事業者、電気事業連合会、日本ガス協会、石油連盟、全国石油商業組合連合会、日本LPガス団体協議会が互いに協力し、復旧及び復興に大きく貢献した。
- 特に、石油元売各社に対してガソリン等の供給に遺漏なきように指示し、石油元売各社や石油製品販売業者等は、石油製品の円滑な供給に貢献した。
- なお、阪神・淡路大震災の教訓から、電気については復電時における各戸ごとの送電の安全性確認を行い、漏電に伴う火災の発生を未然に防止。ガスについてもマイコンメーターの普及が約100%まで進んだ結果、ガス漏洩による火災等の発生を未然に防止できた。
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エネルギーを巡る課題と対応(第1部)
エネルギーを巡る課題(第1章)
第1節 エネルギー需給の今後の見通し
○2030年のエネルギー需給展望
第2節 安定供給の確保を巡る課題
【国内外で生じる環境変化・リスクへの対応力】
○なぜエネルギー安定供給の確保が必要なのか
○エネルギーの安定供給に関する我が国の特徴
○我が国におけるエネルギー安定供給を巡る状況
第3節 環境への適合を巡る課題
【環境と経済の両立】
○地球温暖化問題
○エネルギー利用に伴う大気汚染
第4節 市場原理の活用を巡る課題
基本的考え方(第2章)
第1節安定供給の確保を巡る基本的考え方
○エネルギー輸入に関するリスク
○エネルギー供給システムに関するリスク
第2節 環境への適合を巡る基本的考え方
○地球温暖化問題
○大気汚染
第3節 市場原理の活用を巡る基本的考え方
○市場原理活用の意義と活用にあたっての基本的考え方
エネルギー政策の成果と今後の取組(第3章)
第1節 緊急時の対応整備
【石油・LPガス備蓄推進】
第2節 安全の確保
【各種事故の原因究明と再発防止(関電事故等)、災害への対策】
第3節 エネルギー源の多様化
【エネルギー供給基盤の強化と環境保全に資する原子力の推進(長期計画、原子力立法、核燃料サイクル)】
第4節 エネルギー供給源の多角化等
【我が国における石油・天然ガス権益の保全、自主開発・体制強化】
第5節 省エネルギー
【産業・民生・運輸部門の各部門での対策強化】
第6節 石油産業
【石油の環境調和的活用の推進】
第7節 電気事業制度・ガス事業制度
【基本計画に沿った制度改革の適切な実施】
第8節 国際協力
【アジア等との連携によるエネルギー・環境対策の推進】
第9節 エネルギー広報・教育
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