[原子力産業新聞] 2005年7月7日 第2290号 <3面>

[IAEAシンポ] ウラン生産不足に警告 米NEI部長

 ウィーンで開かれた国際原子力機関(IAEA)のウラン生産国際シンポジウムで、米原子力エネルギー協会(NEI)の燃料供給担当上級部長のF・キラー氏は、6月20日、現在のウラン生産量は、原子力発電所の需要を満たすには不十分と発言した。

 ウラン不足の影響はまだないものの、政府の備蓄や米露の「メガトン・トゥー・メガワット計画」からのウランで不足分を賄っている状況で、余剰分は少なく、すぐに対策を練る必要があると指摘している。

 ウラン不足への対策として、@核燃料の燃焼度上昇AMOX燃料の使用量増大Bウラン濃縮テール濃度の低下による天然ウラン必要量の削減C大量にある減損ウランを再濃縮――など、4つの案を提示した。

 燃焼度を上げることにより、ウラン需要量は6〜99%減り、年間1000万〜1500万ポンドのウランを節約できる。また、世界中の軽水炉の約8%が利用し、その安全性と運用性が実証済みのMOX燃料の使用量を倍増すれば、年間1000万〜1500万ポンドのウランを節約できる。しかし、発電所の改造と許認可関連の問題がある上に、プルトニウムの回収やMOX加工施設が必要になる。

 電力会社は、濃縮ウラン価格を低く抑えるために、ウラン価格の変動に応じて、濃縮テール濃度を常に変動させている。また新型遠心分離法濃縮技術により、テールの利用が進み、新しいウランの需要をかなり削減できる。この方法はロシアで実施されており、生産者が限界コストをカバーできれば、U235含有量の高いテールを利用したウラン回収事業は十分に収益性がある。

 キラー氏によると、これらの案を組み合わせることで、年間約2500万〜3700万ポンドのウランを効果的に供給できるというが、どの案を採用するかは今後の課題だ。


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