[原子力産業新聞] 2005年7月14日 第2291号 <3面>

[IAEA] ウィーンで締約国会議 核物質防護条約改正案を採択

 国際原子力機関(IAEA)は4日〜8日、ウィーンで核物質防護条約の検討・改正会議を開き(=写真)、条約での核物質防護対象を、従来の国際輸送から、国内での輸送・利用・貯蔵、および原子力施設全体に拡大する改正案を採択した。

 この会議は、同条約締約国の要請によりIAEAが招集したもので、条約加盟国112か国中、89か国が参加した。主要加盟国は、4月初めに開いた準備会合で、改正案に原則合意、オーストリア政府を始め24か国が改正案を共同提案していた。

 改正案はまた、核物質が盗難や密輸にあった場合、その場所の特定や回収について加盟国間の協力を拡大するとともに、破壊工作による放射能漏れの場合も協力する。

 改正条約は112加盟国の三分の二の批准によって発効するが、発効までには数年間かかることが予想される。

 IAEAのエルバラダイ事務局長は、「改正条約は、核物質の窃盗、破壊活動、テロを行う者と闘い、抑止し、罰することによって、原子力セキュリティを大幅に強化することに寄与する」と合意を歓迎。

 1987年に発効した核物質防護条約は、核物質の国際輸送中における防護基準を加盟国に義務付けている。しかし2001年9月の米同時多発テロ後、国際テロ組織が核物質を狙う可能性が懸念され、防護対象を広げる方向で検討されてきた。

 一方、国連総会は今年4月、テロリストが核物質や放射性物質を入手するのを防ぐことを目的とした「核テロリズム行為の防止に関する国際条約」を採択、今年9月から署名が行われることになっている。


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