[原子力産業新聞] 2005年7月21日 第2292号 <3面>

[仏ガン国際研] 大規模調査で低線量でのガン増加立証

 仏リヨンにあるガン国際研究所はこのほど、15か国の40万7000人あまりの放射線従事者を対象に、被ばく放射線とガンリスクとの関係を統計的に調査した。

 この結果、低線量の放射線被ばくでも、ガン死亡率がわずかに上昇することが判明、これまでの放射線防護の原則は正しかったとする結論を出し、「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」誌に発表した。

 この調査は、ガンと放射線被ばくとの関係について、これまでで最大規模の国際的調査。調査対象となったのは、日本、韓国、米国、カナダ、および仏、英などの欧州諸国の合計15か国。40万7391人を対象に、フォローアップ調査を含めて、520万人・年分の調査を行った。

 調査では、持続的な低線量放射線を受けた場合のガンのリスクを評価し、環境、職業、医療診断からの被ばく放射線基準の科学的根拠を強化することを目的として行われた。これまでの放射線防護の基準は、主に広島と長崎に落とされた原爆被爆者のデータを基礎としていた。

 同調査によると、100ミリシーベルト(mSv)の累積被ばくは、白血病を除くすべてのガンの死亡率を10%上げる。白血病の場合は、19%上がる。これらのことから、放射線従事者のガン死亡の1〜2%は、放射線被ばくに起因するものと結論づけている。

 同調査の評価は、現在の放射線防護基準で用いられているリスク評価よりも高いが、統計的には一致しており、放射線従事者が通常受ける低線量・低線量率でも、ガンのリスクが若干上昇することを示している。

 この結果について、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学の疫学者で、同調査の分析に参加したJ・カルドー氏は「原爆の生存者から得たデータを基にした放射線防護基準が、妥当であることを確認できる直接的な証拠が得られた」と述べている。


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