[原子力産業新聞] 2005年7月28日 第2293号 <3面>

[IAEA] 衛星で査察データ転送

 国際原子力機関(IAEA)は20日、原子力施設からの保障措置データを、人工衛星を通じてウィーンのIAEA本部に送るシステムの運用を開始したと発表した。このシステムは、4月からスロベニアの原子力施設で試験運用が行われており、コスト効果等を評価後、今年末には世界中の施設で運用を開始する。

 試験運用が行われていたスロベニアの施設には、これまで3か月に一度、IAEA査察官が出向いて、使用済み燃料プールや原子炉の画像や封印データを回収、本部に持ち帰って分析していた。今回試験運用されているシステムでは、5分ごとに必要な画像を撮影、データを暗号化し、人工衛星経由でIAEAに送信する。査察官はそのデータをもとに、査察を行う。

 IAEAは欧州宇宙機関(ESA)とともに、13か国にある100以上の原子力施設からのデータ送信の実現可能性とコストについて、可能性調査を行っている。データ量は、1日あたり数ギガバイトになる。

 IAEAは90年代に、いくつかの原子力施設について電話回線とインターネットを使ったデータ送信やリモート・モニタリングを試行したが、特に途上国では電話回線の信頼性が低い上、大量のデータ送信に向かないという問題があった。衛星回線を使うことにより、その国の通信インフラに依存することなく、高速のデータ転送が行える。


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