[原子力産業新聞] 2005年8月4日 第2294号 <3面> |
[サイクル機構] FBRサイクル実用化戦略調査研究 フェーズUが最終段階へ核燃料サイクル開発機構が電気事業者、電力中央研究所、日本原子力研究所など関係機関の参画・協力を得て、オールジャパン体制で進めるFBRサイクル実用化戦略調査研究のフェーズUが最終段階を迎えている。4種類のFBRや各種の再処理技術と燃料製造技術を組合わせた燃料サイクルを検討してきた。今年度末にはその成果を取りまとめるが、FBRはナトリウム冷却炉、酸化物燃料、燃料サイクルは先進湿式法+簡素化ペレット法が有力な候補になる見通し。「06年度以降は研究開発対象の重点化を考える。今年度末までの残された期間で、有力な候補以外の技術をどう扱うかなどについて検討することになる」(佐賀山豊・核燃料サイクル開発機構経営企画本部FBRサイクル開発推進部長)。取りまとめの段階に入ったFBRサイクル実用化戦略調査研究フェーズUの概況を紹介する。 5つの開発目標 FBRサイクル実用化戦略調査研究のフェーズTは99年7月に開始された。FBR、再処理及び燃料製造の各システムについて革新技術を採用した幅広い技術選択肢を評価。安全性・経済性・環境負荷低減性・資源有効利用性・核不拡散抵抗性の5つの開発目標に適合する有望な実用化候補概念を抽出した。 01年度から今年度まで五年間のフェーズUの目標は、候補概念の成立性を見通すための技術開発、実用化候補概念の明確化、今後の研究開発計画案の検討などが中心。今年度末までにこれらを取りまとめ、国の評価を受けた上で、06年度から概念設計研究や工学規模試験による実用化技術の開発を行う。15年頃には、競合するエネルギー源との比較において、安全性や経済性などで競争力のあるFBRシステム技術体系の提示を目指す。 現在策定中の原子力政策大綱ではFBRに関して、2050年頃から商業ベースでの導入を目指す方針が示される予定だが、「50年頃の商業ベース導入のためには、15年頃以降の技術の実証を経て、実用炉へと繋げていく必要がある」(同)という。 建設費20万円/kW eなどのガイドライン プロジェクトではフェーズU開始にあたり、5つの目標をブレイクダウンしたシステム設計のガイドラインを示した。安全性は、将来炉に求められる炉心損傷の頻度(十のマイナス6乗/炉年未満)にするとともに、仮想的な炉心損傷時の再臨界問題を回避する設計概念とする。経済性では発電単価4円/kWh以下を目指し、FBRの建設費は20万円/kWe以下という設計要求。ちなみに、これまで電力が設計研究を進めてきた「実証炉」は38万円/kWe(100万円kWe換算)であった。 FBR候補は4種類 これらを達成するためのFBRシステムの候補はナトリウム冷却炉、鉛ビスマス冷却炉、ヘリウムガス冷却炉、水冷却炉の四種類。「これまでの開発実績だけではなく、開発目標を如何に達成していくことができるか、技術的実現性を確保できるか、という視点で評価してきている。開発目標を満たす可能性がある概念のうち、現時点で技術的実現性が低くても、それを実現していける可能性が明確であれば有望な候補になる」(同)。 ナトリウム冷却炉は、「常陽」、「もんじゅ」での設計・建設・運転の経験、実証炉の設計研究や要素技術開発の成果により、開発目標への適合性とともに、その技術的実現性を見通すことができる最も有望なシステムとしている。最大の課題は漏洩ナトリウム燃焼やナトリウム―水反応だが、二重伝熱管蒸気発生器、二重配管など全てのナトリウム冷却材バウンダリの二重化により対応する。経済性向上のため、12Cr系鋼の採用による配管短縮、2ループ化による簡素化、ポンプ組込み型中間熱交換器の採用、原子炉容器のコンパクト化などを進める。「もんじゅ」の建屋容積は113×98×89.5m(高さ)で28万kWeだが、実用炉では約58×29×63m(高さ)で150万kWeとし、容積で六分の一、出力で5倍と大幅なコンパクト化を図る。 |