[原子力産業新聞] 2005年9月22日 第2300号 <2面>

[放医研] 航路線量計算システムを公開

 放射線医学総合研究所は16日、国際線航空機に搭乗した際に受ける宇宙放射線による被ばくの量を計算表示するインターネットツール「航路線量計算システム(JISCARD:Japanese Internet System for Calculation of Route Doses)」(=右図)を開発し、同日より公開を始めている。

 これは画面に現れる世界地図上で、出発空港と到着都市および渡航時期を指定すると、各路線の飛行で宇宙放射線によって被ばくすると推定される線量を画面に即時表示するシステム。成田、関西の国際空港から欧米、アジアなどの主要35都市に飛んだ場合に浴びる平均的な宇宙放射線量が分かる。たとえば今月の渡航で、成田ーバンコクでは往復で30μSv、成田ーパリでは往復で155μSvとなる。

 航路線量の計算は、2001年から2011年までの太陽活動の月別平均ポテンシャルのデータに基づき、米国の連邦航空局(FAA)が開発・提供しているCARIー6コードにより実施。

 宇宙放射線の強度は高度によっても変わるため、同システムでは標準的な巡航高度(3万6000ft=約1万1000m)で計算された値に加え、想定される最高(4万ft=約1万2000m)および最低(2万8000ft=約8500m)の巡航高度に対する値も表示される。

 航空機搭乗中は、地上で日常的に浴びている自然放射線よりも、強い宇宙放射線に曝される。そのためパイロットや客室乗務員など、頻繁に航空機に搭乗する職業の人については、宇宙放射線による被ばくが健康にもたらす影響が懸念されており、現在文部科学省では、航空機乗務員の被ばくの取り扱い等に係る審議が行われているほか、ビジネスマンや旅行客ら一般の乗客においても、宇宙放射線による被ばくに対する関心が高まりつつある。

 放医研はこうした社会的関心の高まりに応えることを目的に、同システムを開発。航空機搭乗時に受ける被ばくについての正確な情報を最新の科学的知見と併せて、広く国民に提供する。なお同システムのアドレスは、http://www.nirs.go.jp:8080/jiscard/index.htmとなっている。


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