[原子力産業新聞] 2005年10月20日 第2304号 <4面> |
[政府] 「核テロ防止条約」の概要小泉首相は9月15日、国連本部で「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約(仮称)」に署名した。同条約は放射性物質や核爆発装置等を所持、使用する行為を犯罪とし、犯人の処罰、引渡し等を定めたもの。同条約の仮訳文から主な条項を紹介する(紙面の都合で一部割愛した部分があります)。 前文 この条約の締約国は、国際の平和及び安全の維持並びに善隣主義、諸国間の友好関係及び諸国間の協力の促進に関する国際連合憲章の目的及び原則に留意し、1995年10月24日の国際連合50周年記念宣言を想起し、平和的目的のために原子力を開発し、及び応用するすべての国の権利並びに原子力の平和的応用から得られる潜在的な利益に対するすべての国の正当な権利を認め、1980年の核物質の防護に関する条約に留意し、あらゆる形態のテロリズムの行為が世界的規模で増大していることを深く憂慮し、 国際連合加盟国がテロリズムのあらゆる行為、方法及び実行(諸国及び諸国民の間の友好関係を害し並びに国の領土保全及び安全を脅かすものを含む)を、行われた場所及び行った者のいかんを問わず、犯罪であり、かつ、正当化することができないものとして無条件に非難することを厳粛に再確認する国際連合総会決議第60号に附属する国際的なテロリズムを廃絶するための措置に関する宣言を想起し、(中略) また、国際連合総会決議第210号に基づき、関連する既存の国際文書を補完するため、核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約等を作成するために特別委員会が設置されたことを想起し、 核によるテロリズムの行為が最も重大な結果をもたらすおそれがあり、並びに国際の平和及び安全を脅かすおそれがあることに留意し、また、既存の多数国間条約の規定がこれらの攻撃について十分に対処していないことに留意し、このようなテロリズムの行為の防止並びにこのような行為を行った者の訴追及び処罰のための効果的かつ実行可能な措置を立案し、及び講ずるに当たって諸国間の国際協力を強化することが急務であることを確信し、 国の軍隊の活動がこの条約の枠組みの範囲外にある国際法の規則によって規律されること及びこの条約の適用範囲から一定の行為が除外されることが不法な行為を容認し、又は合法化するものではなく、かつ、他の法規によって訴追することを妨げるものではないことに留意して、次のとおり協定した。 第1条(定義、略) 第2条 1 不法かつ故意に行われる次の行為は、この条約上の犯罪とする。 (a)次の意図をもって、放射性物質を所持し、又は装置を作製し若しくは所持すること。 (i)死又は身体の重大な傷害を引き起こす意図 (ii)財産又は環境に対する実質的な損害を引き起こす意図 (b)次の意図をもって、放射性物質若しくは装置を使用すること(方法のいかんを問わない)又は放射性物質を放出する方法若しくは放出するおそれのある方法で原子力施設を使用し若しくは損壊すること。 (i)死又は身体の重大な傷害を引き起こす意図 (ii)財産又は環境に対する実質的な損害を引き起こす意図 (iii)特定の行為を行うこと又は行わないことを自然人若しくは法人、国際機関又は国に対し強要する意 2 次の行為も、犯罪とする (a)脅迫が信用し得るものであることを示唆する状況の下で、1に定める犯罪を行うとの脅迫を行うこと。 (b)脅迫が信用し得るものであることを示唆する状況の下で脅迫を行い、又は暴行を用いて、不法かつ故意に放射性物質、装置又は原子力施設を要求すること。 3 1に定める犯罪の未遂も、犯罪とする。 4 次の行為も、犯罪とする (a)1、2又は3に定める犯罪に加担する行為 (b)1、2又は3に定める犯罪を行わせるために他の者を組織し、又は他の者に指示する行為 (c)共通の目的をもって行動する人の集団が1、2又は3に定める犯罪の1又は2以上を実行することに対し、その他の方法で寄与する行為。ただし、故意に、かつ、当該集団の一般的な犯罪活動若しくは犯罪目的の達成を助長するため又は当該1若しくは2以上の犯罪を実行するという当該集団の意図を知りながら、寄与する場合に限る。 第3条 この条約は、犯罪が単一の国において行われ、容疑者及び被害者が当該国の国民であり、当該容疑者が当該国の領域内で発見され、かつ、他のいずれの国も第9条1又は2の規定に基づいて裁判権を行使する根拠を有しない場合には、適用しない。ただし、第7条、第12条及び第14条から第17条までの規定は、適当なときはこれらの場合についても適用する。 第4条(略) 第5条 締約国は、次のことのために必要な措置を講ずる。 (a)第2条に定める犯罪を自国の国内法上の犯罪とすること。 (b) (a)の犯罪について、その重大性を考慮した適当な刑罰を科することができるようにすること。 第6条 締約国は、この条約の適用の対象となる犯罪行為、特に一般大衆又は人若しくは特定の人の集団に恐怖の状態を引き起こすことを意図し、又は計画して行われる犯罪行為が政治的、哲学的、思想的、人種的、民族的、宗教的又は他の同様の考慮によっていかなる場合にも正当化されないこと及び当該犯罪行為についてその重大性に適合する刑罰が科されることを確保するため、必要な措置(適当な場合には、国内立法を含む)を講ずる。 第7条 1 締約国は、次の方法により協力する。 (a)自国の領域内又は領域外で行われる第2条に定める犯罪の自国の領域内における準備を防止し、及びこれに対処するため、必要な場合には国内法令を適合させることを含むあらゆる実行可能な措置(同条に定める犯罪の実行について助長し、扇動し若しくは組織し、事情を知りながら当該犯罪のために資金を提供し若しくは事情を知りながら技術上の援助若しくは情報を提供し、又は当該犯罪を実行する個人、集団及び団体が行う不法な活動を自国の領域内において禁止する措置を含む。)を講ずること。 (b)自国の国内法並びにこの条約に定める方法及び条件に従って正確なかつ確認された情報を交換すること、並びに第2条に定める犯罪を探知し、防止し、抑止し、及び捜査するため並びに当該犯罪を行った疑いのある者に対して刑事訴訟手続を開始するために適宜講ずる行政上の措置その他の措置を調整すること。特に、締約国は、第2条に定める犯罪が行われたこと及び自国が知った当該犯罪を行うための準備について、第9条の規定により他の国に遅滞なく通報するため、及び適当な場合には国際機関に通報するため、適当な措置を講ずる。 2 締約国は、他の締約国からこの条約に基づき、又はこの条約の実施のために行われる活動に参加することにより、秘密のものとして受領する情報の秘密性を保護するため、自国の国内法に適合する範囲内で適当な措置を講ずる。締約国は、国際機関に対し情報を秘密のものとして提供する場合には、当該情報の秘密性が保護されることを確保するため、措置を講ずる。 3 締約国は、この条約により、国内法上伝達が認められていない情報及び関係国の安全保障又は核物質の防護を害する情報の提供を要求されるものではない。 4 締約国は、国際連合事務総長に対し、この条に規定する情報の送付及び受領について責任を有する自国の権限のある当局及び連絡先を通報する。同事務総長は、すべての締約国及び国際原子力機関に対し、権限のある当局及び連絡先に関する情報を送付する。これらの権限のある当局及び連絡先は、常に連絡が可能でなければならない。 第8条 この条約上の犯罪を防止することを目的として、締約国は、関連する国際原子力機関の勧告及び任務を考慮しつつ、放射性物質の防護を確保するための適当な措置を講ずるためにあらゆる努力を払う。 第9条 1 締約国は、次の場合において第2条に定める犯罪についての自国の裁判権を設定するため、必要な措置を講ずる。 (a)犯罪が自国の領域内で行われる場合 (b)犯罪が、当該犯罪の時に自国を旗国とする船舶内又は自国の法律により登録されている航空機内で行われる場合 (c)犯罪が自国の国民によって行われる場合 2 締約国は、次の場合には、第2条に定める犯罪について自国の裁判権を設定することができる。 (a)犯罪が自国の国民に対して行われる場合 (b)犯罪が国外にある自国の国又は政府の施設(大使館その他外交機関及び領事機関の公館を含む。)に対して行われる場合 (c)犯罪が自国の領域内に常居所を有する無国籍者によって行われる場合 |