[原子力産業新聞] 2005年11月4日 第2306号 <2面> |
[書評] 「知っておきたい環境問題」 大塚徳勝 著環境についてのニュースは毎日の新聞にあふれている。しかし我々の知識は断片的で、全体像を見失いがちである。 本書は環境問題の種類とその原因、および現状についての全容をカバーし、科学および社会科学の両側面から平易に解説している。 「経済成長を目指して大量生産、大量消費、大量廃棄の開発型市場経済システムをとる限り地球の破滅は近く、人類はおそらく百年も存続できないでしょう」と著者は警告する。 たしかに、人口爆発と食糧・水問題、森林の破壊と砂漠化、廃棄物問題、土壌汚染、環境ホルモン、水圏の環境問題、大気汚染と酸性雨、フロンによるオゾン層の破壊、二酸化炭素による地球の温暖化と章を読み進むと、文明のあり方、すなわち現代思想そのものが問われているとする警告は、大げさなものではない。あれだけ騒がれて実施されているゴミのリサイクルや省エネが小手先のものであり、それさえもゴミの量を減らすことにはつながっていないとの指摘には、落胆するほかはない。 著者は以前、日本原子力研究所に勤務していたことがある放射線物理学者である。風力や太陽発電などの自然エネルギーに期待を持たしていない点では公平と言えるが、現在の原子力発電については正確ではあるがクールな取り扱いで、核融合発電へのつなぎとの記述はやや疑問だ。 この本の長所としては、データを基に平易かつ客観的に解説していること、わが国と諸外国の新しいデータを多く引用し、わかりやすく易しく解説していることだ。 共立出版刊、B6版135頁。定価1500円(税抜)。 |