[原子力産業新聞] 2005年11月10日 第2307号 <3面> |
[インタビュー] 国際社会に生きる IAEA職員に聞く(5)原子力関連企業・機関出身者がほとんどを占めるIAEA日本人職員の中で、山下ひろ志氏は、ウィーンにある国連工業開発機関(UNIDO)出身と異色だが、国際公務員としてはむしろ正道。購買担当一筋に歩んできた。 大学卒業後、日本のカメラメーカーに就職し、購買、輸出入業務などを経験。この間、東京で行われた第1回国連競争試験に合格、口頭試験にも受かった。 「小さい頃から、海外に出て活動したいと思っていた」ことが動機。競争試験の実施が新聞に掲載されていたのを見て、受験したというが、「海外に出るつもりで、英語をしっかり勉強していた」。 しかし試験には合格したものの、国連からは「ポストが空かなければ呼んでもらえない」。日本のメーカーでの勤務を続け、その後、UNIDOで購買担当官のポストを得た。 13年間のUNIDO勤務を経て、1993年にIAEA技術協力局の購買課長に就任した。IAEAの技術協力計画で使う機器等を購入し、途上国に送るのが主な仕事だ。IAEAの機構変更に伴い、今年1月、同課は管理局に移管された。 UNIDOからIAEAに移ってみて、「非常に科学的、熱心にIAEAのために仕事をしている」ことに感銘を受けたという。IAEAの主要業務の一つである保障措置(査察)は、国連機関としてはユニークなものであり、警察業務のような仕事を大規模に行っているのはIAEAだけではないかともいう。 ただ最近、採用される職員の質が変わってきていること、イラク援助での国連幹部職員のスキャンダル以来、内部監査の締め付けが厳しくなり、業務の能率が落ちていることを懸念する。 「最近の若い人は、日本にいる方が楽でいいと考える人が多いようだ」と言いながらも、山下氏も最初に就職したカメラメーカーにいた方が給料はよかったかも、と苦笑。しかし、「世界に出て、世の中のためになる仕事は、ほかにない」と、国際公務員として世界への貢献を誇りにする。 IAEA職員を目指す日本人には、「英語で他の人たちとしっかりやりとりができること」、「しっかりした職業的意見を持って他の人と議論ができないと、国連では勤まらない」とアドバイスをする。IAEAの日本人職員から、英語が難しくて仕事がしにくいと相談を受けることもあるという。さらに、西洋文明について、文学、伝統などを学び、国際知識を深めておくことも重要だと指摘する。 山下氏の家族は、UNIDO時代に知り合ったフランス人の奥さんとの間に、ウィーン大学でラテン言語を専攻する娘さんが一人。(このシリーズ終了) |