[原子力産業新聞] 2005年11月17日 第2308号 <2面>

[政府] 柏崎刈羽4号機対象に 原子力総合防災訓練を実施

 政府は9日と10日、本年度原子力総合防災訓練を、東京電力の柏崎刈羽発電所を対象に実施した(=写真)。原子力災害対策特別措置法に基づき、中央省庁、原子力安全委員会、地方公共団体、原子力事業者等関係者が共同して実践的な防災訓練を行うもので、関係機関、住民ら約2500人が参加した。

 今回はトラブル第一報から、原災法第10条に定める通報、東京と現地とを結ぶ警戒態勢確立を実務者中心に行う1日目と、一時中断を挟んで、同法第15条に定める緊急事態報告から、緊急事態宣言発出、各種応急対策、収束までを総理官邸、主務大臣、県知事まで入れて行う2日目の、2日間にわたって行われた。

 訓練はオフサイトセンターの「柏崎刈羽原子力防災センター」が現地訓練の主な舞台となり、中央対策本部、関係自治体とをテレビ会議システムで結んで、指示・情報提供、技術的助言など、相互の協力を円滑に図りながら実施。特に、昨年の新潟県中越地震の教訓を踏まえた孤立住民搬送、プレスルーム、模擬記者を置いての広報対応、通信回線遮断に備えた衛星回線への切り替えなどが今回訓練のポイントとなった。

 訓練2日目となる10日7時55分、東電より、前日の「柏崎刈羽4号機(BWR、110万kW)、原子炉容器内で原子炉冷却材の漏洩を知らせる警報が発報したため、原子炉を手動停止。原子炉圧力容器内の圧力上昇に伴って非常用炉心冷却系が作動」との想定事象が、「ポンプの故障停止により、全ての非常用炉心冷却系による注水機能が不能」に至ったとの連絡を受け、経産省は原災法第十五条に定める原子力緊急事態と判断、総理大臣への上申を経て、8時30分原子力緊急事態宣言が発出された。これを受けて、東京に首相を本部長とする「原子力災害対策本部」が設置され、西野あきら経産副大臣、泉田裕彦新潟県知事がセンターに到着。引き続き国、自治体が組織する「原子力災害合同対策協議会」との連携により、総力を挙げた応急対策を開始した。

 その後想定事象は燃料被覆管破損に至るとのフェーズに入り、相当量の放射性物質が環境中に放出されると予測した対策本部は10時25分、発電所近隣住民の避難、屋内退避を決定、自衛隊車両による避難住民搬送が行われた。

 訓練終了後、新潟県の泉田知事は会見で、多くの機関がネットワークを組んで意義があったと評価するものの、住民の不安を煽らない情報の流し方、地震に伴う原子力事故といった「複合災害」への対応など、中越地震に見舞われた自治体としての見解を述べた。


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